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【ナチス独軍・最重要拠点】オランダ南西部の防衛地下壕ガイドツアーに参加してみた!

【ナチス独軍・最重要拠点】オランダ南西部の防衛地下壕ガイドツアーに参加してみた!

オランダ南西部に位置し、ヨーロッパ最大の港であるロッテルダム港の入口近くにHoek van Hollandという街があります。この小さな街には、第二次世界大戦中にオランダがナチス・ドイツ軍の支配下となっていた際に建設された防衛地下壕*が当時の状態で残っており、戦時中を経験していない後世にも当時の歴史を伝える役目を持つ博物館として一般公開されています。

※この防衛地下壕は、「大西洋の壁 Atlantic Wall」の一部になります。「大西洋の壁」とは、第二次世界大戦中にアドルフ・ヒトラー率いるナチス・ドイツ軍がイギリス本土からの連合国軍の侵攻から守るために、占領したヨーロッパ西部(フランスやデンマーク、ノルウェー等)の海岸に設置した海岸防衛線(主に地下壕や砲丸台、地雷地帯)のことを指します。

 

この防衛地下壕博物館は、毎月一度3時間に渡るガイドツアーが組まれており(一人当たり9ユーロの参加料)、この防衛地下壕だけでなく、周辺のナチス・ドイツ軍が使用していた戦時中の施設を散策しながら、ガイドの説明に耳を傾けて当時の歴史を学ぶことができる企画が用意されています。

これまでに、私が居住するハーグ市内に残存する複数の防衛地下壕を巡りながら戦時中の歴史を学んできましたが、今回の防衛地下壕ガイドツアーも非常に濃厚な時間となりました。特に、戦時中に撮影されたナチス・ドイツ軍の写真と現在の様子を見比べながらガイドの説明を受けることができたことによって、当時の歴史をありのまま「見る」ことができたように思います。

 

今回の記事では、この防衛地下壕博物館が企画する3時間のガイドツアーで見ることができる様子を紹介したいと思います。

 

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Hoek van Holland大西洋の壁博物館

Hoek van Holland「大西洋の壁」博物館

Hoek van Holland「大西洋の壁」博物館 ※執筆者が撮影

ハーグ近郊の海岸ビーチ「スフェニンゲン Scheveningen」近くにも、同様の名前「大西洋の壁博物館 Atlantic Wall Museum」があります。同様の名前ですが、異なる場所に位置しています。

そして、現在はオランダ国内の各所には残存する防衛地下壕を博物館として一般公開されていますが、このHoek van Holland大西洋の壁博物館(以下、大西洋の壁博物館)はオランダで最初に一般公開された防衛地下壕であり(1996年)、オランダで最も有名な防衛地下壕となっています。

 

ロッテルダム港の地図

ロッテルダム港の地図

この大西洋の壁博物館が有名となっている理由には、オランダで最初の防衛地下壕の博物館であることや保存状態が良い点だけでなく、戦時中にナチス・ドイツ軍にとって最も重要な防衛拠点であったことが関係しています。

なぜならば、Hoek van Hollandは前述したようにロッテルダム港の入口付近に位置しており、この防衛拠点を連合国軍に突破されてしまうと連合国軍にロッテルダム奪還もしくは西ヨーロッパ内陸部への奪還へと繋がる可能性が高いからです。そのため、Hoek van Holland付近にはたくさんの防衛地下壕や地雷、戦艦の侵入を防ぐ障害などが設置されていました

 

この大西洋の壁博物館に着いて最初に驚くことは、ナチス・ドイツ軍が当時使用していた対戦闘機用の発射砲が、博物館前に展示されていることです!そして、実物を触ったりすることもできるので、子供たちが発射砲によじ登ったり、発射砲を背景に親が写真撮影したりしていました。

また、この防衛地下壕も70年以上前の施設にもかかわらず、当時の状態のまま保存されている立派な博物館になっています。大きさもこれまでに見てきた地下防衛豪の中でも突出しています。

以下では、3時間のガイドツアーの様子を当日の流れとともに紹介していきます。

 

3時間のガイドツアー

Hoek van Holland大西洋の壁博物館の3時間ガイドツアー

サングラスをかけた男性が今回のガイド ※執筆者が撮影

これから参加する3時間のガイドツアーは公式サイトで事前に予約・支払いを済ませているため、博物館入場口で受付を済ませた後に博物館前でガイドと他の参加者を待ちます。

 

ドキュメンタリー短編動画の視聴

定刻通りに開始されたガイドツアーの最初は、博物館内の視聴覚室にて戦時中のHoek van Hollandでどのように大西洋の壁ないし防衛地下壕が建設されていったのか、防衛地下壕がどのように機能していたのかが開設されるドキュメンタリー短編動画を視聴します。

この30分弱のドキュメンタリー短編動画は、これまでに訪れた防衛地下壕で見てきた動画とは異なり、当時のHoek van Hollandの状況がよく分かる動画となっています。もちろん、ナレーションはオランダ語なのでどのような解説がなされているのか詳細には分かりませんが、描写される動画内から十分に理解することができます。

オランダ国内沿岸部に設置された大西洋の壁建設には、基本的にナチス・ドイツ軍兵士ではなく一般のオランダ人が携わっています。そして、Hoek van Hollandの大西洋の壁建設には付近に住むであろうオランダ人男性たちが、私服で作業している光景が短編動画から見られました。

ハーグ中心地に位置するハーグ歴史博物館に紹介されていた説明によれば、大西洋の壁建設に従事していたオランダ人はナチス軍に強制されていたのではなく、志願して建設に従事するとともに対価として賃金も受け取っていたとされています。

「強制的な」労働ではないものの、ナチス軍支配下で生き残るために「選択せざるを無かった」労働であることから、一種の強制労働とも言えます。その一方で、ナチス軍支配に苦しみながらも彼らの圧政に反抗するオランダ人からしてみれば、彼らは「裏切者」という立場となっています。

そうした当時の歴史的状況が分かる短編動画は、非常に面白かったです。Youtubeでこの短編動画が公開されているかどうか探してみましたが、見当たらなかったので視聴してみたい方はこのガイドツアーに是非参加してみて下さい!

博物館内での解説

博物館内での解説

博物館内での解説 ※執筆者が撮影

短編動画を視聴した後は、博物館内の展示物をガイドが色々と説明してくれます。私たち夫妻以外の参加者たちはオランダ語を理解できる人たちであり、もちろんガイドはオランダ語でのみの解説で進んでいきます。途中でガイドが英語で説明してくれる場面もありましたが、ガイド本人は英語があまり得意ではないということで多くの解説を理解することができませんでした。

 

対戦艦用カノン砲が海岸に向かって設置されている

対戦艦用カノン砲が海岸に向かって設置されている ※執筆者が撮影

しかしながら、このガイドツアーに参加していたドイツ人男性が気を利かして、私たち夫婦に英語で解説してくれて助かりました。そして、この男性が終始に渡って私たち夫婦に英語で説明し続けてくれてました。

一般的にドイツ人は第二次世界大戦中にナチス軍が行ったことを話すことを嫌うと聞いていましたが、このドイツ人男性はナチス軍をネタにした冗談を連発していました(笑)。こうした冗談はそれほど面白くなかったものの、彼のおかげでガイドツアーがより実りのあるものとなったことは確かです。

 

ナチス・ドイツ海軍の国旗

ナチス・ドイツ海軍の国旗 ※執筆者が撮影

この博物館の中はそれほど多くの展示物が用意されているわけではありませんが、当時のナチス・ドイツ軍が残していった私物だけでなく、軍隊が大西洋の壁防衛に使用していた物品が展示されています。また、当時のHoek van Hollandの航空写真と現在の様子を見比べることができます。

博物館裏側の草木が生い茂る場所を散策

博物館裏側の草木が生い茂る場所を散策

博物館裏側の草木が生い茂る場所を散策 ※執筆者が撮影

博物館を出発したガイドツアーは、上記の画像のように博物館の裏側に位置する草木で生い茂る場所を散策していきます。単純に散策しているのではなく、現在は草木で生い茂る場所にはナチス・ドイツ軍が当時使っていた施設や当時の歴史が分かるスポットを解説するために散策しています。

 

例えば、Hoek van Holland一帯の防衛地下壕の電力供給源ないし電話回線が設置されてあった施設。

電力供給源の施設

電力供給源の施設 ※執筆者が撮影

 

連合国軍戦闘機からの急襲時に地上にいたナチス軍兵士が身を潜めながら戦闘する穴場。

連合国軍戦闘機からの急襲時に地上にいたナチス軍兵士が身を潜めながら戦闘する穴場。

連合国軍戦闘機からの急襲時に地上にいたナチス軍兵士が身を潜めながら戦闘する穴場。 ※執筆者が撮影

 

360度に照準を設定できる発射砲跡地。

対戦闘機用の発射砲跡地

対戦闘機用の発射砲跡地 ※執筆者が撮影

跡地の床をよく見てもらうと分かると思いますが、多くの凹みが見受けられると思います。これは、発射した後の砲弾の薬きょうが地面へ跳ね返った跡になります。現場で見てみると、すごい数の跡が残っているために、この場所から連合国軍に対して数多くの砲弾が発射されていたことが分かります。

オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト。オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。


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大学時代に旧ユーゴスラヴィア史を研究し、1年間セルビアに留学。旧ユーゴ史研究者に少し憧れたものの諦める。現在は、オランダ・セルビアに特化した記事を書くフリージャーナリストとして活動。

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