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社会的メッセージが強く込められているヘヴィメタル4曲【反原発/宗教対立/米軍元兵士/反狩猟】

社会的メッセージが強く込められているヘヴィメタル4曲【反原発/宗教対立/反狩猟】

ヘヴィメタルと言えば、「悪魔崇拝(サタニズム)」や「死」と関連する言葉がぎっしり詰まった歌詞で作り上げられている音楽ジャンルと多くの人が思っているのではないでしょうか?

もちろん、こうしたステレオタイプのような印象は、部分的には真実です。

例えば、悪魔崇拝や反キリスト教をテーマにして独特の音楽スタイルが特徴的なブラックメタル、死に関連する言葉がたくさん登場することが特徴的なデスメタルが、ヘヴィメタル音楽のサブジャンルとして確立されていることから明らかです。

 

しかしながら、このように一般大衆が危険視してしまうヘヴィメタル音楽の中には、世界規模の現代社会で巻き起こっている、または抱え込んでいる社会問題を改善しようとするために、社会的メッセージを強く込めている楽曲を制作しているバンドが数多く存在していることを知っていますか?

今回の記事では、社会的メッセージが強く込められているヘヴィメタル曲を4つ紹介したいと思います。

キーワード:反原発、宗教対立(ユダヤ教徒とイスラム教徒)への融和、米軍元兵士への社会的理解、反狩猟(&動物愛護)

 

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【反原発】Heaven Shall Burn – Corium

《歌詞はこちらにて参照》

ドイツ出身のジャーマン・メタルコア/モダン・メロデスを中心に作曲しているHeaven Shall Burn。

私がこれまでに鑑賞してきたミュージックビデオの中で、映し出される自然の美しさに最も圧倒されて心を奪われた映像作品です。この映像内では、美しい大自然の中を駆け巡りながら、誰一人として人影が見当たらない荒廃した文明社会の残物が映し出されています。この映像が収録された場所は、南米チリの最南端マガジャネス・イ・デ・ラ・アンタルティカ・チレーナ州になるそうです。

この曲のタイトルとなっている「Corium」は普段聞いたことのない言葉になりますが、原子力発電所がメルトダウンを起こした時に生成される炉心溶融物を指します。そのタイトルが表す通り、曲のテーマとなっている社会的メッセージは原子力開発が将来の地球にもたらす副産物の存在を分かっていながらも、技術革新の名のもとに原子力エネルギーを利用しようとしてる人類社会に対する警鐘です。

つまり、「美しい大自然の中に、誰一人として人影が見当たらない荒廃した文明社会の残物がある世界」は、原子力エネルギーを使用し続けた人類社会の未来を暗示していることになります。

 

Heaven Shall Burnのメンバーたちは、インタビューで以下のように話しています。

幸運なことに、原子力研究所以外でのメルトダウン事故が発生したのは、歴史上これまでに3回だけだ。
この曲「Corium(炉心溶融物)」は、われわれ人類の将来に対して無責任にも無慈悲に利益を追求し、人々を洗脳することによって推進している原子力エネルギー施設の狂気を象徴している。
当初は、原子力エネルギーの使用は人類にとって大きな利益をもたらす存在だと思われていた。しかし、考えてほしい。大きなゾウの排泄物を処理する場所にまったく検討がつかないとしたら、そのゾウを購入して自宅のリビングルームで飼育しようと思うかい?

出典:http://www.centurymedia.com/artist.aspx?IdArtist=110

上記のインタビューでメンバーたちが述べた「3度のメルトダウン事故」は、以下の事故を指しています。

  • スリーマイル島原子力発電所事故(アメリカ)
  • チェルノブイリ原子力発電所事故(ウクライナ)
  • 福島第一原子力発電所事故(日本)

 

多くの日本人にとっても衝撃的な原発事故だった2011年の東日本大震災が引き起こした福島第一原発力発電所事故も、メンバーたちが訴えかけている「原子力エネルギー施設の狂気」の一例です。この原発事故が起きた日本政府は一時的に日本全国の原子力発電所を停止したものの、その後は過去の事故などを完全に忘れたかのように再稼働しています。

この曲「Corium」は、人類の文明の将来的な発展を危険にしてしまう技術革新には、一体本当に価値があるのかと考えさせられてしまうものです。特に、福島第一原子力発電所事故を実際に目の当たりにした日本社会が、原子力発電所を再稼働させる政党を支持し、現在も原子力エネルギーを利用してしまっていることを許す日本社会の罪は大きいと感じさせられます。

 

歌詞内には、原子力発電を推進する社会全体だけでなく、何も行動を起こさない人々を批判する言葉が散りばめられています。

技術革新の名の下に、天罰(原発事故)の記憶が残っているにもかかわらず、私たちは何もしないでじっとしている。そして、私たち人類は制御できなくなった。

技術革新の名の下に、技術革新推進者たちは終わることのない苦痛の記憶が残っているにもかかわらず、他に選択肢がないことを認め、間違った方向へ人々を導いている。

反対する行動を起こさずして、呪い(原発事故)から解放されたい希望は存在しない

技術革新者たちは勝利の頂きから転落していった(原子力開発の失敗が明らかになった)にもかかわらず、我々は依然として盲目のままで、悲惨な将来へと歩き進んでしまっている。

詳細な歌詞は、冒頭の歌詞リンクを通じて参照することができます。

 

※上記で紹介した「Corium」が収録されたアルバム

 

【宗教対立への融和】Orphaned Land feat. Hansi Kürsch – Like Orpheus

中東イスラエル出身でオリエンタルな音色が特徴的なフォーク・メタル・バンドOrphaned Land。

このミュージックビデオを鑑賞した時に「なんて素晴らしい作品だ!」と思うと同時に、あとあと宗教的な問題を引き起こしそうだと不安になりました。このミュージックビデオでは、ユダヤ教徒の男性とイスラム教徒の女性が宗教的側面が色濃く反映される日常生活から隠れるようにして、ヘヴィメタル音楽に触れる時間を楽しむ光景が描かれているからです。

そう、このミュージックビデオに込められている社会的メッセージは、イスラエル人(ユダヤ教徒)とパレスチナ人(イスラム教徒)の宗教対立の融和を促すことです。

Orphaned Landのメンバーたちは、、インタビューで以下のように話しています。

このミュージックビデオでは、中東出身のメタルヘッズ(ユダヤ教徒とイスラム教徒)が直面する真実の物語を伝えようとしている。
中東のメタルヘッズたちが送る日常生活は、どこかしか道徳的な罪がえんえんと続く洞窟のようだ。そして、日常の衣服や宗教的習慣などの文化によって、中東のメタルヘッズたちは互いに大きく異なる存在だという印象を与えているかもしれない。
けれども、実際には中東のメタルヘッズたちは、同じメタルの世界に逃げ出しているんだ。お互いに交流し合っていないために、どれだけ互いに共通点があるのかを想像することができていなんだ。僕の個人的な意見として、今日のメタルは依然として、多くのコミュニティや国々、とりわけ中東諸国でサタニズム(悪魔崇拝)として捉えられていて、イスラエル周辺諸国の多くの国々では禁止されている音楽ジャンルだ。
けれども、メタルは僕たちが知る限りで最も素晴らしい共存できるコミュニティの一つであることは間違いない。

出典:Distorted Sound

このミュージックビデオを見てもらうと分かるように、ユダヤ教徒の男性もイスラム教徒の女性も宗教的側面が色濃く反映される日常生活から逃れるために、ヘヴィメタル音楽に自由で幸福の時間を追い求めています。そして、お互いに好きなバンドのライヴコンサートに行って生のヘヴィメタル音楽を聴きながらストレス発散をしている。しかし、翌日の朝になると互いにバス停で待っている光景では、イスラム教徒の女性が乗車したバスにはユダヤ教徒の男性は乗車せずにそのままバス停に残ったままでいる。

つまり、このミュージックビデオを通じてOrphaned Landが伝えたいことは、登場人物であるユダヤ教徒の男性もイスラム教徒の女性もヘヴィメタル音楽という共通点があるにもかかわらず、これまでの歴史と社会が作った宗教対立の間に閉じ込められて互いに交流できないでいる状況がある。そして、ヘヴィメタル音楽の他者に寛容なコミュニティを通じて、宗教的な違いを乗り越えていこうと中東のメタルヘッズに訴えかています。

 

トランプ米国大統領がエルサレムをイスラエルの首都として認めたことにより、イスラエルとパレスチナ間の緊張が再度上がった昨今、このミュージックビデオが社会全体に訴えかけるメッセージは大きいと考えています。とりわけ、私はヘヴィメタル音楽のコミュニティほど自分とは異なる他者に寛容な社会はないと信じているからこそ、ヘヴィメタル音楽が持つ社会への良い影響力に期待している部分があります。

 

※上記で紹介した「Like Orpheus」が収録されたアルバム[発売予定日:2018年2月]


 

【米軍元兵士への社会的理解】Five Finger Death Punch – Wrong Side Of Heaven

アメリカ出身の典型的なアメリカン・ヘヴィメタルバンドFive Finger Death Punch。本国アメリカでは社会現象になるほど大人気のバンドです。このミュージックビデオは視聴回数が2億回弱となっています。

このミュージックビデオは、イントロ部分となる映像はじめの1分間を見てもらえればすぐに分かります。戦地から本国に帰還した米軍元兵士の多くが一般社会の生活に戻れないためにホームレスとなってしまっていることやPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされている現代のアメリカ社会が長年直面している問題を描いています。

 

ミュージックビデオ内には、衝撃的な事実がたくさん述べられています。

あなたがこの動画を見ているあいだ、30万人の米軍元兵士は路上で寝ています。そして、この数字はどんどん上昇しています。1,400万人以上の米軍元兵士がホームレスの状態になる危険性があるとされています。

67%以上のホームレスとなっている米軍元兵士は、最低3年間は軍に所属しながら国に仕えていました。彼ら米軍元兵士はすべてを投げ出したにもかかわらず、私たちは彼らを見捨てている。

推定46万人の米軍元兵士がPTSD(心的外傷ストレス障害)に苦しんでいる。

年間に5千人近い米軍元兵士が自ら命を絶っている。この数は、2時間に1人の米軍元兵士が自殺していることを指す。

 

このFive Finger Death Punchは昔から米軍元兵士との関係性が強く、上記のミュージックビデオに出演している人物たちの中にも米軍元兵士たちが含まれています。そして、Five Finger Death Punchはバンド活動に必要なスタッフ、例えば複数のツアーバス運転手や機材担当などの職に米軍元兵士を雇っていたりします。

こうした彼らの善意による活動も、本国アメリカでの大きな人気をさらに促しているのかもしれません。

※上記で紹介した「Wrong Side Of Heaven」が収録されたアルバム

 

【反狩猟】Heaven Shall Burn – Hunters Will Be Hunted

《歌詞はこちらにて参照》

冒頭で紹介した反原発の曲「Corium」を歌うHeaven Shall Burnの曲「Hunters Will Be Hunted(狩猟者は狩猟されろ)」。

曲のタイトルから想像がつくように、反狩猟がテーマとなっている曲です。このミュージックビデオでは、雪が降る山中を歩く一人の「狩猟者」が子鹿を狩猟しようとしていると、森の妖精のような一人の美しい女性が子鹿を狩猟されないように助けます。最終的に、狩猟者はまんまと森の妖精の策略に引っかかり、崖から転落して「狩猟される」展開となっています。

 

Heaven Shall Burnのメンバー全員は、趣味での狩猟に強く反対する活動家であると同時に、動物愛護を求め、食肉の大量生産に反対するヴィーガニストであることから肉製品を選択的に食べていません。そのため、曲の歌詞内には彼らの反狩猟を訴える社会的メッセージが強く込められています。

もう我慢の限界に達した。殺害者(狩猟者)に対して情けは一切かけない。暴力には暴力で答えよう。狩猟者は狩猟されろ。

私たちは殺害者の悪意ある行為が止まらない限り、毅然とした態度を取り、退却する意思はない。お前の強欲さを正当化できるものは何もない。

妥協もしないし、降伏するつもりもない。なぜならば、自ら闘うことのできない者を守っているからだ。正義は絶対に勝つ。

 

Heaven Shall Burnはバンド結成初期の頃に、動物愛護を訴えた曲「Voice Of The Voiceless(声なき者の声)」を作成していて、この曲がメロディアスであることから多くのファンから親しまれています。

血の雨が世界中を覆い尽くし、悪臭と腐敗臭だけが私たちが感じ取れるものであるべきだ。暗闇に隠れて、私たちの頭から消し飛んでいるけれども、残虐行為と残忍な屠殺はどこにでも起きている。

最も弱い弱者のために
最も身分の低い下等の者のために
私の声は、声なき者のために張り上げよう
私のこぶしは、罪のない潔白の者のために突き上げよう

こちらの曲もオススメなので、ぜひ聴いてみてください!

 

※上記で紹介した「Hunters Will Be Hunted」が収録されたアルバム


 

オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト。オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。


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大学時代に旧ユーゴスラヴィア史を研究し、1年間セルビアに留学。旧ユーゴ史研究者に少し憧れたものの諦める。現在は、オランダ・セルビアに特化した記事を書くフリージャーナリストとして活動。

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