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ドキュメンタリー映画「キスメット」ーセルビア人とアルバニア人の若い女性たちが共同製作ー

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「女性」だから向いていない職業や分野はあるのか?

「女性」だから向いていない職業や分野はあるのか?

出典:映画「キスメット」の一場面より

以前から急成長を続けている職業分野としてIT業界が挙げられる。

IT業界やその分野に長けている人の多くは、インターネットを通じて世界中の様々な異なる価値観に触れている環境で育ってきた人が多いために、伝統的で保守的な考えを持つ人とは真逆に位置する考えを持っている人が多いような印象を持つ。

しかしながら、バルカン地域のセルビアやアルバニアではそうではない。

 

ー政府機関で働くITスペシャリストの女性の体験ー

オープンソーステクノロジーやMozillaで働きはじめた当初、周りの男性に仕事のことを話すと、「君は頭が良すぎて、IT業界に似合わないよ」や「君はITの何を知っていると言うんだ?」、「君はITオタクに見えないね」といった反応があった。

IT業界で女性たちが直面する固定観念を取り除くことは、本当に、本当に難しい。なぜならば、こうした固定観念は男性たちがこのIT業界で先頭に立って引っ張っていくことを役立てる要素だからだ。

※翻訳者:執筆者
出典:映画「キスメット」の一場面

ーゲーマー&ユーチューバーとして活躍する女性の体験ー

私がバルカンで初めてゲームプレイを録画してアップロードするユーチューバーだったことが大きな問題だった。女性がゲームをしているところを録画し、動画をユーチューブにあげている光景を奇妙に感じる人が多かった。そして、バルカンの人々は真新しいものを簡単に受け入れられない国民性を持つ。その影響で、動画のコメント欄には「台所に戻れ」といった辛辣なコメントがあったりした。

※翻訳者:執筆者
出典:映画「キスメット」の一場面

 

看護学科で学ぶ学生は、医療現場における矛盾した状態を指摘する。

ー看護学科で医学を学ぶ女学生の体験ー

医学部で勉強する学生は男性よりも女性がはるかに多い。けれども、実際の医療現場や医者たちを見てみると、上述した状況とは異なっていることが分かる。特に外科医を見てもらうと一目瞭然で、男性と女性の割合における隔たりは、とても大きい。

私の意見として、こうした状況になっている理由は履修する学問の違いや知能の差がではなく、この社会生活の中で女性が抱えている多くの責務が引き起こしているのではないかと思う。

最も大きな理由は、家族を持ち始めること。特に、女性は子どもたちの育児をしなければならないことは誰もが知っていることだから。このことが、女性の時間を制限していることにつながっているのかもしれない。女性は優秀な医者になるために何かを諦めなければならないの?私はそう思わない。男性ができるならば、女性だってできるはずだもの。

※翻訳者:執筆者
出典:映画「キスメット」の一場面

 

家父長制社会を変えようとする女性たちの取り組み

家父長制社会を変えようとする女性たちの取り組み

出典:映画「キスメット」の一場面より

こうした色濃く残っている家父長制社会に住んでいる若い女性たちは、声を挙げて現状を変えようとする取り組みを行っている。

 

ー政府機関で働くITスペシャリストの女性の体験ー

ウィキペディアに投稿する女性の割合は、全体の15%のみにとどまっていることを憂慮して、Wiki Women Campでは女性たちがウィキペディアに記事を寄稿することを奨励する取り組みを行っている。なぜならば、ジェンダーに敏感な言葉を使って女性たちが記事を書くことは重要だと思うからだ。そして、セルビアとアルバニアの若い女性たちが相互に情報交換を行うなどをして協同作業を行っている。

※翻訳者:執筆者
出典:映画「キスメット」の一場面

 

ーアルバニアで宝石ショップを営む女性の体験ー

女性は内側の生活だけでなく、外側の世界でも差別されていると感じ続けている。もちろん、好きなことや考えていること、成し遂げたいものに対して声を上げたり、何かを始めたり、強くなる必要があるのよ。

戦士にならなきゃね。

※翻訳者:執筆者
出典:映画「キスメット」の一場面

 

セルビア人とアルバニア人間の民族対立

セルビア人とアルバニア人間の民族対立

出典:映画「キスメット」の一場面より

セルビアとアルバニア出身の若者たちは互いをよく知らない。あなたがセルビアの首都ベオグラード出身だという事実を知って、親愛な笑顔をかけてくれる人が、アルバニアの首都ティラナに存在することを信じてくれるセルビア人がどれくらいいるだろうか?

べオグラードの中心地に位置し、20世紀の建築物で最も有名な建物の一つが、「アルバニア宮殿」という名前が付けられていることをアルバニア人たちは知っているのだろうか?

アルバニア南部のビーチが未開の地中海の真珠であることを信じ、ヴァロンやサランダへ夏季休暇先として想像することができるセルビア人はどれくらいいるのだろうか?

これら以外にも、数多くのことが互いの国にあることを私たちは知らないし、知ろうともしない私たちは互いに直接会って、互いの話に耳を傾け、それぞれの体験を学びながら、心と両腕を大きく広げて互いに交流する可能性を放棄してしまった。もしかしたら、互いのことに関心を持ち、手を取り合い、互いに愛し、親愛なる友情をつくる時がやってきたのかもしれない。

※翻訳者:執筆者
出典:映画「キスメット」よりナレーションの一部を抜粋

 

映画「キスメット」内では、ベオグラード大学でアルバニア語を学ぶセルビア人女学生ミレナ・ベランの話を通じて、セルビア人とアルバニア人間に存在する民族対立の一部を垣間見ることができるようになっている。

しかしながら、セルビア人とアルバニア人が互いに憎悪を募らせてしまっている背景については全く触れられていない。

この両民族の対立に最も大きな影響を与えているのが「コソヴォ問題」だ。

 

コソヴォはセルビア南部に位置する元セルビアの領土であり、現在は住民の大多数がアルバニア人(時としてコソヴォ人と表現する場合もある)である。コソヴォに居住するアルバニア人たちの間で民族主義が高揚し、1998年にコソヴォ紛争が勃発した。2008年にコソヴォに居住するアルバニア人たちがセルビアからの独立を宣言するものの、依然としてセルビア政府はコソヴォの独立を認めていない状況だ。

こうしたコソヴォ紛争やコソヴォの独立を経験してきたセルビア人たちだけでなく、独立前にコソヴォに住んでいた少数派のセルビア人から冷遇されてきたアルバニア人たちも互いの民族に対する憎悪を募らせてしまっていることが現在まで続いている。

 

セルビア人側からのアルバニア人に対する印象は、以下の記事で実体験をもとにして詳細に話していますのでご参照ください。

セルビア人居住区側から見る「コソヴォ」《前半》

セルビア人居住区側から見る「コソヴォ」《後半》

 

また、映画「キスメット」ベオグラード大学でアルバニア語を学ぶセルビア人女学生ミレナ・ベランは、セルビア人としてアルバニア語を勉強している状況で直面してきた民族問題や試練などを記事にして、アルバニア語で公開したものがある。

こちらは、以前に私が日本語訳したものがあるので、ただの学生であるミレナが体験してきたことを詳しく知ることができる。

アルバニア語を学ぶセルビア人学生が直面する民族問題と心に抱く葛藤の物語

 

セルビア人とアルバニア人の間で実現する相互交流

セルビア人とアルバニア人の間で実現する相互交流

出典:映画「キスメット」の一場面より

世界中のメディアが報じる姿勢は、いかにセルビア人とアルバニア人間に一生解決することができない民族対立や領土問題、政治レベルでの対立を浮き彫りにさせがちだが、民間レベルでの実情を覗いてみると様々な異文化交流が行われていることに気がつく。

 

ーアルバニア語を学ぶセルビア人女学生の体験ー

セルビア人とアルバニアの人学生が異文化交流を目的に交換留学を行ったときに、Kristina Progri(「キスメット」に登場している1人の若い女性)が3日間滞在したときの友人で、今でも頻繁に連絡を取り合い、私の人生で築いてきた友情関係で最も大切な人のうちの一人だ

※翻訳者:執筆者
出典:映画「キスメット」の一場面

 

また、近年になってセルビア人男性と結婚するアルバニア人女性が増えてきていることも注目に値する。とりわけ、若い女性が少なく結婚できないでいる男性が多い農村部で多く見られるようになってきたようだ。

そして、アルバニア出身のアルバニア人の女性たちやその家族は、自身や娘がセルビア人と結婚することに反対していないという興味深い話もある。

 

ーセルビア人男性と結婚したアルバニア人女性の話ー

2年前にセルビアにやってきて、セルビア人男性と結婚した。これは運命だったのよ。私が以前に住んでいた街の隣人が、セルビア出身の良い男性がいると紹介してくれた。そして、彼と結婚して、セルビアにやってきた。良い夫と家族に恵まれた。1年前には男の子を産んだ。名前はラザでこの村で唯一の子ども。それ以外にはいない。

※翻訳者:執筆者
出典:映画「キスメット」の一場面

 

また、バルカン地域で偏見を持たれがちであるLGBTコミュニティでも、セルビア人とアルバニア人間で交流する機会もある。

ーレズビアン・フェミニスト・人権活動家の女性の体験ー

サッカーは、フーリガンやテロ、暴力、民族憎悪が過熱する場所として公に認識されている。そうした負の要素を利用して、サッカーを偏見を壊す材料として使った。

Fem Slam」はベオグラード出身のLBT女性たちを集めてスポーツを一緒にしようと促すスポーツ組織であり、アルバニアでサッカーをするアルバニア人活動家やLBT女性たちと一緒に親善試合を企画した。

※翻訳者:執筆者
出典:映画「キスメット」の一場面


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執筆者のプロフィール

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フリージャーナリスト&英語・セルビア語通訳者
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オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト

オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。

お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。

大学時代に旧ユーゴスラヴィア史を研究し、1年間セルビアに留学。旧ユーゴ史研究者に少し憧れたものの諦める。現在は、オランダ・セルビアに特化した記事を書くフリージャーナリストとして活動。

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