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ベオグラードで最も古い「新墓地[Novo groblje]」を訪れる

ベオグラードで最も古い「新墓地[Novo groblje]」を訪れる

セルビアの首都ベオグラード中心地から徒歩で約30分ほど離れたところに、ベオグラードに現存する墓地で最も古い「新墓地[セルビア語:Novo groblje]」があります。

この墓地は1886年に建設された墓地で、東京ドームが6個以上も収まるほどの敷地面積(約30ヘクタール)を持ち、建設から約150年の歴史の間に約34万人の人々の遺体が埋葬されています。実は、一昨年2016年に無くなった義理の祖母は、本人の意思に従って火葬後にこちらの墓地に埋葬されています。

 

こちらの墓地は、ベオグラードで最も有名な墓地となっています。その理由は、1900年代初期に起きたバルカン戦争や2つの世界大戦で命を落とした国民的英雄たちが安らかに眠っている場所としてだけでなく、セルビア出身の著名人の多くが埋葬されているからでもあります。

ただし、こうした墓地に埋葬されている人々やセルビアが歩んできた歴史を知らなくとも、この墓地を歩くだけでユニークな墓石やセルビアならではのもの、そして知る人は知っているセルビア出身の著名人の墓などを見かけたりすることができ、散策するだけでも楽しめるスポットです。

 

今回の記事では、このベオグラードで最も古い「新墓地(Novo Groblje)」をオススメの観光スポットの一つとして紹介したいと思います。

 

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最も古い墓地なのに、「新墓地」と言われる理由

新墓地の向かい側にあるベオグラード1944年解放記念公園

新墓地の向かい側にあるベオグラード1944年解放記念公園

冒頭の導入部分で、「ベオグラードに現存する墓地で最も古い墓地」と紹介してあるにもかかわらず、正式名称が「新墓地」、つまり新しい墓地という表現を使っていることに違和感を感じませんか?

実は、1886年に建設されたこの「新墓地」以前には、別の大きな墓地(旧墓地[Staro groblje])があったために、その旧墓地に対して新墓地と名付けられたのだと思います。

その旧墓地があった場所は、現在ベオグラード市民の憩いの場となっているタシュマイダン[セルビア語:Tašmajdan]公園となっています。ベオグラード市民でも多くの人が、友人や家族、恋人とともにベンチに座って談笑している真下に、かつて遺体が埋葬されていたと知らないかもしれません。

反対に、現在のタシュマイダン公園はかつて墓地だったとは想像できない美しい公園になっているとも言えます。

 

タシュマイダン公園内にある聖マルコ聖堂

タシュマイダン公園内にある聖マルコ聖堂

残されている史料によれば、今回の記事で紹介している新墓地が建設された背景には、現在タシュマイダン公園となっている旧墓地の敷地面積では不十分だったからとのことです。しかしながら、ベオグラード大学で同じ歴史学を専攻していたセルビア人友人によれば、それ以外にも理由があったと話しています。

その理由とは、「オスマン帝国に長年支配されていたベオグラード市にはかつて数多くのモスクがあり、旧墓地として機能していた現在のタシュマイダン公園にも大きなモスクが建っていた。イスラム教徒ではなくセルビア正教徒であるセルビア人たちは、モスクがあった場所に墓地があることに否定的だった」からだとのことです。

 

この理由を立証するものは探してみたものの見つからないために信憑性はないものの、当時の旧墓地はきちんと手入れが行き届いておらず、景観が乱されているとの批判があったとのことです。そのため、しっかりと手入れが行き届いた墓地を新たに建設する必要があったのだろうと思います。

こうした理由から新墓地が1886年に建設された後、タシュマイダン公園にあった旧墓地から遺体を掘り起こして新墓地へ運び出す作業が行われていたそうです。当時でどれくらいの遺体が埋葬されていたのか正確には分かりませんが、すべての運搬作業に約40年もかかっていたようなので相当な量だったと推測できます。

 

新墓地の概観

新墓地の正面玄関

新墓地の正面玄関

旧墓地から徒歩20分弱のところにある新墓地は、街の中心部から少し離れたところにあることからも想像できるように静かな地区に位置しています。近くにはベオグラード大学に通う地元学生用の寮があるため、若者の姿をよく目にする地区でもあります。

 

新墓地の正面玄関近くで花やロウソクを販売するロマ系セルビア人

新墓地の正面玄関近くで花やロウソクを販売するロマ系セルビア人

新墓地の正面玄関入口付近には、お葬式や墓参りに訪れる人々のためにロマ系セルビア人たちが花やロウソクを常に販売しています。

 

新墓地の中:整備されて、しっかりと清掃された道

新墓地の中:整備されて、しっかりと清掃された道

新墓地の中に入ってみると、整備が行き届き、しっかりと清掃されていることが分かる道が四方八方に続いています。ベオグラードだけでなくセルビア国内どこでも道がデコボコだったり、経年劣化でボロボロになった道が続き、そしてゴミがそこら中に落ちているため、新墓地の美しさが保たれている環境には驚くはずです。

 

美しい彫刻が設置された墓石の数々に圧倒される

美しい彫刻が設置された墓石①

美しい彫刻が設置された墓石①

新墓地には19世紀後半からの著名人が埋葬されている墓地ということもあり、豪華で美しい彫刻が設置された墓石がたくさん見受けられます。

 

美しい彫刻が設置された墓石②

美しい彫刻が設置された墓石②

美しい彫刻が設置された墓石③

美しい彫刻が設置された墓石③

美しい彫刻が設置された墓石④

美しい彫刻が設置された墓石④

美しい彫刻が設置された墓石⑤

美しい彫刻が設置された墓石⑤

 

国の英雄が眠る墓地

国の英雄が眠る墓地①

国の英雄が眠る墓地①

この新墓地には、1900年以降に起きたバルカン戦争や2つの大きな世界大戦で国のために勇敢に闘い、命を落とした英雄たちも埋葬されています。

 

国の英雄が眠る墓地②

国の英雄が眠る墓地② 「国民的英雄、ユーゴスラヴィア人民軍将軍」と書かれている

国の英雄が眠る墓地③

国の英雄が眠る墓地③ ★マークはユーゴスラヴィア共産党(共産主義者同盟)の象徴

国の英雄が眠る墓地④

国の英雄が眠る墓地④

 

ロシア人の墓地

ロシア人の墓地①

ロシア人の墓地①

新墓地の一角には、ロシア人の墓地も設置されています。バルカン戦争や世界大戦で同盟軍として共に戦って命を落とした者や戦後にセルビアに留まって亡くなった者が埋葬されています。

 

ロシア人の墓地②

ロシア人の墓地②

ロシア人の墓地③

ロシア人の墓地③ WWⅠ戦中に命を落としたロシア人兵士を奉る慰霊碑

 

セルビア出身の著名人が眠る墓

セルビア出身の著名人が眠る墓

セルビア出身の著名人が眠る墓

新墓地はベオグラードで最も古く、歴史的に重要な墓地であることから、数多くのセルビア出身の著名人が埋葬されています。

 

日本人でも聞いたことがあるであろう作品「ドリナの橋」でノーベル文学賞を受賞したことのあるイヴォ・アンドリッチはここで眠っています。

ノーベル文学賞を受賞した作家イヴォ・アンドリッチが眠る墓

ノーベル文学賞を受賞した作家イヴォ・アンドリッチが眠る墓

 

他には、私が尊敬しているセルビア共和国元首相のゾラン・ジンジッチが眠る墓もこちらにあります。ジンジッチ氏は1990年代のミロシェヴィッチ独裁体制後のセルビアに民主主義を導入することに尽力した政治家だったものの、2003年にセルビア系マフィアによって射殺されました。

セルビア共和国元大統領だったゾラン・ジンジッチが眠る墓

セルビア共和国元首相ゾラン・ジンジッチが眠る墓

 

最近の話だと、2018年1月中旬に何者かによって射殺されたコソヴォ北部のセルビア人政治家オリヴェル・イヴァノヴィッチ氏が新墓地で埋葬されました。下記画像は、同氏の息子が墓石の前でロウソクに火を灯している光景です。

 

まとめ

観光客がほとんど訪れないようなマイナーなスポットになりますが、ベオグラードの歴史を知りたい方、違う側面から観光を楽しみたい方にはオススメのスポットになります!

また、第二次世界大戦中にホロコーストの犠牲となったユダヤ人が埋葬されているユダヤ人墓地が新墓地の向かい側に立地しています。新墓地と同様に、ベオグラードの歴史に触れることができるスポットになっていますので、一緒に観光してみてください!

 

 

オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト。オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。


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大学時代に旧ユーゴスラヴィア史を研究し、1年間セルビアに留学。旧ユーゴ史研究者に少し憧れたものの諦める。現在は、オランダ・セルビアに特化した記事を書くフリージャーナリストとして活動。

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