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エア・セルビアがLCC(格安航空会社)化を発表。果たして本当に安くなったのか?

2018年1月24日、セルビア国営航空会社エア・セルビア(Air Serbia)がこれまでの経営戦略を大幅に変更して、格安航空会社が提供するような新たなサービスそして新たな料金体系を発表しました。

 

エア・セルビアは本日、新たな料金体系を導入することを発表しました。この新たな料金体系の導入によって、旅客者は自身のニーズに沿って旅行をカスタマイズできる機会を持てるようになります。

今後お客様は4種類の料金体系から航空券を予約することができるようになります。4種類の料金体系の詳細は、エコノミー・ホワイト、エコノミー・ブルー、エコノミー・レッドそしてビジネス・シルバーとなります。これら4種類の異なる料金体系を通じて、持ち込み荷物や受託手荷物の制限や旅行日程の変更に対する自由度、そして追加サービスなどを好きなようにカスタマイズすることができます。

この新たな料金体系は、2018年3月1日よりエア・セルビアが運行するすべての目的地(ただしニューヨークは除く)に反映されます。

出典:News from Air Serbia(アクセス日:2018年1月25日)

 

実は、これまでのエア・セルビアが販売する航空券の料金は高すぎて、母国であるセルビア国民の給与・生活水準から大きくかけ離れた料金設定となっていました。そのため、利用者の大半を埋めるべき母国セルビア人の利用者からは「気軽に利用できない!」などという批判の声が上がっていました。

例えば、乗り継ぎ便と言えど、ルフトハンザ航空グループ(オーストリア航空やスイス・インターナショナル航空含む)で販売されている航空券の方が、エア・セルビアのそれよりもはるかに安いという事態となっていました。

では、今回の料金体系と提供するサービスの大幅な変更により、果たして本当に安くなったのか、セルビア国民だけでなく日本人も含む世界中の旅客者がより便利に利用できる航空会社へと近づいたのかどうかを検証してみたいと思います。

 

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エア・セルビアってなに?

ベオグラード・ニコラ・テスラ国際空港のエア・セルビアのチェックインブース

ベオグラード・ニコラ・テスラ国際空港のエア・セルビアのチェックインブース ※執筆者が撮影

そもそも日本からセルビアを訪れる観光客が非常に少ないために、多くの日本人にとって航空会社エア・セルビアを一度も聞いたことがないと思います。

実は、エア・セルビアはかつてJAT航空会社と呼ばれるユーゴスラヴィア国営航空会社でした。その歴史は、第二次世界大戦前に現在の西バルカン地域に存続した「スロヴェニア・クロアチア・セルビア人王国」時代だった1927年にまで遡ります(当時の名前はアエロプットAeroput)。

第二次世界大戦後にユーゴスラヴィア社会主義国が建設された後に、JAT(Jugoslovenski Aerotransport )航空会社へと名前が変更されます。

1990年代に起きた旧ユーゴスラヴィア紛争によってユーゴスラヴィア社会主義国は崩壊しましたが、隣国モンテネグロと連合国家を形成していたセルビア(当時の名前はユーゴスラヴィア連邦共和国)は、そのままJAT航空会社を国営企業として引き継いでいきました。

 

私が2012年に1年間の留学生活を終えてセルビアの首都ベオグラードから帰国する際には、ベオグラードから乗継地であるロシアのモスクワ空港までJAT航空会社を利用しました。その時に見たJAT航空機の衝撃的なオンボロさは今でも記憶に残っています。

機体の古さから果たして無事に離陸できるだろうかと思うだけでなく、離陸直後の機体の振動と異常音を聞いて飛行中に空中分解するのではないかという恐怖心を感じました。当時のJAT航空会社を利用した人は同じような印象を抱いたのではないでしょうか?

また当時のJAT航空会社が提供するサービスや客室乗務員の接客態度は劣悪であり、機内で提供される軽食のサンドイッチのレベルは酷かったことを覚えています。食パンがパサパサすぎて本当に不味かったです。

 

ベオグラード・ニコラ・テスラ国際空港の出発ロビー表玄関

ベオグラード・ニコラ・テスラ国際空港の出発ロビー表玄関 ※執筆者が撮影

こんな最悪なJAT航空会社でしたが、2013年に大きな転換期を迎えます。この年に、セルビア政府はJAT航空会社の全資本のうち49%を中東アラヴ首長国連邦(UAE)に本拠地を置くエティハド航空会社に売却しました。

そして、セルビア政府とエティハド航空会社が共同出資者として新たにエア・セルビアという名前に改名して、大規模な改革を行いました。

この大規模な改革により、これまでオンボロだったボーイング機はエアバス機となったり、客室乗務員の接客態度は改善されたり、これまでヨーロッパ限定だった飛行地も中東方面や米国、中国など遠距離にまで拡大していきました。最近だとオーストラリアまでの直行便を出す計画も進行しています。

 

その一方で、エア・セルビアとなってから販売される航空券が高額になってしまったことが大きな懸念を呼んでいました。その懸念の声から影響を受けたのか分かりませんが、エア・セルビアは今回の記事で取り上げる新たな料金体系とサービスを発表しました。

 

新たな料金体系の詳細

エア・セルビアが提供する新たな料金体系の詳細

エア・セルビアが提供する新たな料金体系の詳細 出典:airserbia.com

これまでのエア・セルビアが提供する航空サービスにはファーストクラスは存在せず、エコノミークラスとビジネスクラスのみありました。

今回の新たな料金体系の導入によって、大幅な変更が加えられた点はエコノミークラスが3つに分類されて、それぞれホワイトとブルー、レッド(セルビアの国旗に使用されている3色)が新たに創設されました。

これら3つの新たなエコノミークラス分けの詳細は、以下の通りになります。上記の画像と一緒に見比べながら読んだほうが分かりやすいかもしれません。

 

エコノミーホワイト:身軽に、そして出来るだけ旅費を抑えて旅行したい旅客車に理想的なプラン。このプランには、最大8kgまでの一つの持ち込み手荷物が含まれています。予約が早ければ早いほど、料金はより安くなります。

エコノミーブルー:こちらブランは、最大23kgまでの大型受託荷物を持って旅行したい旅客者にピッタリです。それ以外に、一つの持ち込み手荷物と、マイレージポイントを集めたり、手数料を払えば旅行日程の変更が可能となっています。

エコノミーレッド:こちらのプランは上記のエコノミーブルーに便利なサービスが追加されています。追加されているサービスは、機内食の提供、旅行日程の変更無料、空港でのチェックイン可、前もって機内席を指定できるサービスとなります。

出典:News from Air Serbia(アクセス日:2018年1月25日)

 

上記の画像と説明を見てもらうと分かるように、エコノミーホワイトのプランは8kgまでの持ち込み手荷物だけが可能となっているサービスとなっています。このサービスは、まさしく格安航空会社が提供しているサービスとまったく一緒です。

エア・セルビアの発表によれば、各料金体系の航空券を予約した後でも公式サイトの予約管理ページにて、自身に必要なサービスを追加で購入できる機能があるようです。

各追加サービスの詳細や料金については明らかにされていませんが、例えばエコノミーホワイトのプランで予約した後に機内食を追加することができるといった具合になりそうです・

 

料金体系の変更で、どれくらい安くなったのか検証!

今回の料金体系の変更で、どれくらい安くなったのかを比較検証してみようと思います!

比較検証には、最も値段が安くなるであろう料金体系エコノミーホワイトのプランを利用し、アムステルダム(オランダ)ーベオグラード(セルビア)間の往復航空券を使用します。

 

【変更前】2018年2月20日(火)〜23日(金)

【変更前】2月20日(火)〜23日(金)の往復券

【変更前】2月20日(火)〜23日(金)の往復券

 

 

合計金額:270.42€

 

【変更後】2018年3月19日(火)〜23日(金)

【変更後】3月19日(火)〜23日(金)の往復券

【変更後】3月19日(火)〜23日(金)の往復券

 

 

合計金額:241.65

 

変更前(270.42€)と変更後(241.65)の差額:28.77€

 

上記のように、料金体系の変更前に当たる2月時と変更後に当たる5月で比較検証してみたところ驚くべきことに……そんなに安くなっていませんでした。

そもそもの問題として冒頭でも述べたように、新たな料金体系を発表する前のエア・セルビアが設定していた料金自体が高い(270.42€)ために、変更後に約30€弱安くなっていても実際の航空券代が安いとはまったく感じません。

昨今の航空会社は割安の航空券を販売しているだけでなく、多くの格安航空会社が参入している現状を考慮すると、尚更そのように感じます。

直行便とは言えど、アムステルダムーベオグラード間の往復航空券の合計金額が約241€(約3万円強)というのは、正直に言って高すぎるという印象を受けませんか?

 

結論

ベオグラード・ニコラ・テスラ国際空港の館内の様子

ベオグラード・ニコラ・テスラ国際空港の館内の様子 ※執筆者が撮影

上記で検証した結論として、新たなサービスそして新たな料金体系を発表したエア・セルビアは残念ながらほとんど安くなっていません。

最大8kgまでの1つの持ち込み手荷物だけの他格安航空会社と同じサービスであるホワイトエコノミーを選択しているにもかかわらず、往復航空券が200€を超えてしまうことを果たして安い値段と言えるのでしょうか?

 

例えば、上記にて検証したアムステルダムーベオグラード間の直行便を出している格安航空会社TransAvia(オランダ国営会社KLMの子会社)は、同期間の往復航空券を半額以下となる約112€で販売しています。しかもエア・セルビアと同じサービスを提供しています。

セルビア国内全体の平均月給が300€にも達していないであろう実際の経済的状況を考慮するならば、安い値段などとは言えないでしょう。

 

総合すると、今回エア・セルビアが発表した新たなサービスと新たな料金体系は、旅客者がニーズと好みによってカスタマイズできる利便性が高くなりました。

その一方で、セルビア国民だけでなく世界中の旅客者に対して「エア・セルビアを選択したい!」と思わせるような手頃な値段設定にまでは至っていませんでした。

セルビア国内経済の向上を願う私は、多くの日本人旅客者にセルビア国営企業エア・セルビアを利用するように推奨したいところですが、私自身はサービスや料金体系変更後のエア・セルビアも敬遠するだろうと思います。

 

最後に、補足事項として様々な目的地間で検証してみたところ、エコノミーホワイトのプランで最も値段の安い航空券が買える目的地は、オーストリアの首都ウィーンとなっています(往復で約150€)。この往復航空券の値段にはセール割引も含まれているため、通常の価格はもう少し高くなるかもしれません。

 

オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト。オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。


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大学時代に旧ユーゴスラヴィア史を研究し、1年間セルビアに留学。旧ユーゴ史研究者に少し憧れたものの諦める。現在は、オランダ・セルビアに特化した記事を書くフリージャーナリストとして活動。

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