KOTARO JOURNAL

ナチス独軍の防衛地下壕が観覧できる「スフェニンゲン大西洋の壁博物館」【デン・ハーグ観光】

スフェニンゲン「大西洋の壁」博物館

皆さんは「大西洋の壁 Atlantic Wall」という言葉を聞いたことがありますか?

「大西洋の壁」とは、第二次世界大戦中にアドルフ・ヒトラー率いるナチス・ドイツ軍がイギリス本土からの連合国軍の侵攻から守るために、占領したヨーロッパ西部(フランスやデンマーク、ノルウェー等)の海岸に設置した海岸防衛線(主に地下壕や砲丸台、地雷地帯)のことを指します。

※この「大西洋の壁」を想起させるものとして、アカデミー作品賞を受賞した映画「プライベート・ライアン」で描かれたノルマンディー上陸作戦が挙げられます。冒頭シーンでは、アメリカ軍がフランスへ上陸するためにナチス独軍の防御線を突破しなければなりませんでした。

「大西洋の壁 Atlantic Wall」

「大西洋の壁 Atlantic Wall」 ※執筆者が撮影

 

そして、この「大西洋の壁」はオランダにも設置されていました。

多くの方が『アンネの日記』の存在を通じて知っていると思いますが、第二次世界大戦中のオランダはナチス独軍から侵攻されて占領支配されていました。1940年から1945年までの約5年間という長期に渡る占領支配中に、ユダヤ人虐殺や飢餓によって約20万人の国民が死亡したと言われています。

 

オランダの海岸沿いに設置されていた防衛線「大西洋の壁」の多くは戦後に取り壊されてしまったようですが、デン・ハーグ近郊には当時ナチス独軍の拠点として機能していた地下壕が、現在は歴史を伝える博物館として一般公開されています

今回は、第二次世界大戦中にナチス独軍が対連合国軍の防衛線「大西洋の壁」として設置した地下壕を博物館として公開されている「スフェニンゲン大西洋の壁博物館 Atlantiwall Museum Scheveningen」の魅力をご紹介したいと思います。

 

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デン・ハーグにおける「大西洋の壁」の概要

デン・ハーグに設置された「大西洋の壁」の範囲図

デン・ハーグに設置された「大西洋の壁」の範囲図 ※執筆者が撮影

他のオランダ諸国同様にデン・ハーグもまた、第二次世界大戦中はナチス独軍の占領支配下になっていました。

デン・ハーグと言えば、非常に美しいスフェニンゲン・ビーチが有名です。天気がいい日は多くの現地人が日光浴をしたり、家族や恋人同士で浜辺を散歩したり、夏になると海水浴を楽しむ賑やかな浜辺です。

ナチス独軍支配下当時のスフェニンゲン・ビーチの様子

ナチス独軍支配下当時のスフェニンゲン・ビーチの様子 ※執筆者が撮影

現在は美しいこの浜辺もナチス独軍の支配下では様変わりします。このスフェニンゲン・ビーチが位置する海岸沿いが連合国軍による侵攻の標的になる可能性が非常に高いと判断したナチス独軍は、デン・ハーグを2番目に重要な防衛拠点と指定しました。

そして大規模な防衛線を設備する必要があることから、海岸沿いの地区一帯は居住禁止区とされたために約14万人の市民がデン・ハーグを強制的に退去させられました。また、防衛線には地下壕や対戦車用バリケードを設置する必要があることから、全体で約3万もの家屋や建物が取り壊され、約5万本もの木が切り倒されました。

デン・ハーグに設置された「大西洋の壁」分布図

デン・ハーグに設置された「大西洋の壁」範囲図 デン・ハーグ歴史博物館プロジェクターの画像より ※執筆者が撮影

 

上記の画像は、デン・ハーグ歴史博物館で第二次世界大戦中にデン・ハーグ市内に設置された「大西洋の壁」の範囲図になります。

黄色の枠で囲まれた箇所が、防御線「大西洋の壁」の境界線部分となります。ピンク色の丸枠で囲まれた箇所がデン・ハーグ市の中心地に当たることから、市の中心からすぐそこに「大西洋の壁」が設置されていたことになります。

この記事で紹介する「スフェニンゲン大西洋の壁博物館」がある場所は、黄色の星マークが付いている場所になります。

 

以下では、この博物館が一般公開している地下壕2つを順番に紹介していきます。

 

第1の地下壕-608番

第1の地下壕608番はデン・ハーグ市内に設置された地下壕の司令部となります。そのため、地下壕内には様々な部屋があると同時に、地下なのにもかかわらず全く窮屈に感じません。

天井も低くなく、意外とゆっくりと過ごせるのではないかと思いました。

 

空気清浄機

地下壕内へ清浄な空気を送り込む空気清浄機

地下壕内へ清浄な空気を送り込む空気清浄機 ※執筆者が撮影

地下壕の入口を通過すると、すぐ右側の部屋には地下壕内へ清浄な空気を送り込む空気清浄機なるものが設置されています。そして、この2台の空気清浄機によって、室内に煙や毒ガスが侵入することを防いでいました。

 

様々な部屋

民兵部屋や司令官部屋、無線通信部屋、電話交換部屋

民兵部屋や司令官部屋、無線通信部屋、電話交換部屋 ※執筆者が撮影

冒頭で述べた通り、この地下壕は司令部として機能していたために司令官用の個室が準備されていたり、本部との連絡に使っていたであろう無線通信が行える部屋や地下壕間での情報交換が行えるように30ヶ所と電話交換が可能な部屋が設置されていました。

 

オランダ駐在ナチス独軍が着用していた軍服

駐在したナチス独軍司令官たちの軍服

オランダ駐在ナチス独軍が着用していた軍服 ※執筆者が撮影

地下壕内には、オランダ駐在ナチス独軍が着用していた様々な種類の軍服が展示されています。私はミリタリーオタクでもナチス独軍オタクでもないので正確には分かりませんが、これらの軍服は今までに見たことがないデザインだなと思いました。もしかしたら、オランダ仕様なのかな?

 

ナチス独軍の日用品や武器、私物品

ナチス独軍の日用品や武器、私物品

ナチス独軍の日用品や武器、私物品 ※執筆者が撮影

戦争終了後にナチス独軍が降伏した際に地下壕に残されたであろう様々な日用品や武器、私物品も展示されています。

 

デン・ハーグに設置された大規模な防衛線「大西洋の壁」の建設には、ナチス独軍だけでなくオランダ民間の建築会社も携わっていたようです。また、彼ら以外にもオランダ民間人も「強制で」携わっていました。そうした彼らは、下の写真のようなワッペンを腕に身に着け、ナチス独軍の象徴が刻まれたヘルメットを被って作業をしていました。

防衛線の建設に携わったオランダ民間人が装着していたもの

防衛線の建設に携わったオランダ民間人が装着していたもの ※執筆者が撮影

 

第2の地下壕-622

第2の地下壕-622

※執筆者が撮影

司令部であった第1の地下壕608番からすぐ隣に、第2の地下壕622番があります。こちらの地下壕622番は、階級の低い兵士が食事や睡眠を取るために使われていたと思われます。

こちらの地下壕には、2部屋だけあります。

 

1つ目の部屋

ドキュメンタリー映画が放映されている部屋

ドキュメンタリー短編映画が放映されている部屋 ※執筆者が撮影

1つ目の部屋では、少数の展示物とともに第二次世界大戦中のデン・ハーグ市内の様子が分かるドキュメンタリー短編映画が放映されていました。放映されていた短編動画の音声はオランダ語のみでしたが、当時のナチス独軍の様子やデン・ハーグ市民の生活を映像として見れる歴史的に非常に価値のあるものだと思います。

このドキュメンタリー短編映画は、以下で視聴できます。

 

 

2つ目の部屋

階級の低い兵士の生活部屋

階級の低い兵士の生活部屋 ※執筆者が撮影

博物館の説明によれば、この部屋はタイムカプセルで過去に戻った気分になる部屋と呼んでいます。その理由は、当時のナチス独軍が使っていた状態のまま保存されている部屋だからです。

この部屋だけでなく、この地下壕全体が修復作業自体がほとんど行われておらず、施設自体がとても老朽化している印象を抱きます。

地下壕のハッチ

地下壕のハッチ ※執筆者が撮影

 

まとめ

この博物館の留意点として、毎週の日曜日しか開館していない点とデン・ハーグ中心地から少し離れた場所に位置していることです。

そのため、数日だけデン・ハーグに観光で滞在する観光客に方にとっては、日程調整しなければいけない点や不便なところにありますが、デン・ハーグの歴史を知りたい方や第二次世界大戦の歴史に興味がある方は行ってみることを強くオススメします!

 

スフェニンゲン「大西洋の壁」博物館の詳細
公式サイト:http://atlantikwallmuseum.nl/en/(英語表記)
住所:Van Aerssenstraat, 2582 JD, The Hague, the Netherlands.
アクセス方法:9番トラム電車停車駅「Wagenaarweg」にて降車し、徒歩6分

開館日・時間:毎週日曜日11時~16時のみ(正確な情報はこちらにて)
入場料金:大人3ユーロ、子供(12歳以下)1ユーロ(現金のみ取り扱い可)

 

オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト。オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。


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大学時代に旧ユーゴスラヴィア史を研究し、1年間セルビアに留学。旧ユーゴ史研究者に少し憧れたものの諦める。現在は、オランダ・セルビアに特化した記事を書くフリージャーナリストとして活動。

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