KOTARO JOURNAL

ベビーメタル嫌いだった私が、蘭ユトレヒト公演で感じたもの

ベビーメタル嫌いだった私が、蘭ユトレヒト公演で感じたもの

2018年6月6日にオランダ中部の街ユトレヒトで行われたベビーメタル(BABY METAL)のライヴに行ってきました。このライヴが、私にとってベビーメタルを聴く初めての機会でした。

今回のライヴは、5月からベビーメタルが行っている世界ツアー(日本を除けば、実際はアメリカとヨーロッパ地域のみ)の一つであり、ヨーロッパ4ヶ国のうち偶然にも私が居住しているオランダが含まれていた形になります。

 

私はそもそもベビーメタルのファンでも全くないですし、曲もギブ・ミー・チョコレートくらいしか聞いたことがありませんでした。けれども、オランダでのベビーメタル公演を観るために、日本から駆けつけた方のハーグ市内ガイドツアーを承った縁、そして中古チケットも低価格で入手できたこともあり、ガイドツアー終了した後も一緒にユトレヒトへ移動し、同公演を一緒に鑑賞する機会に恵まれました。

正直に言って、“日本のアイドルグループのようなヴォーカル達が、似非メタルをやっている”ベビーメタルに対して強い抵抗感を持っていた私は、ライヴを鑑賞する前は「ライヴを観た後に、より一層嫌いになるのかな」と思っていました。

しかし、実際はまったく逆の感情、もはや感動に近いのようなものを持ちました。

 

これまでにしっかりと聴いたことのないにもかかわらず、ベビーメタルが嫌いだった私。そんな私が、ベビーメタルのライヴを初めて観て感じたことをこの記事で率直にまとめたいと思います。

 

スポンサーリンク

ベビーメタルの音楽性に対する抵抗感

これまでに当ジャーナルのサブジャンル「音楽」でも、ヘヴィメタルに関する記事をいくつか執筆していることからも分かる通り、私はヘヴィメタルが大好きです。ヘヴィメタルに出会っていなかったら、本当につまらない人生になっていたんじゃないかと思ってしまうくらいです。

 

そんな私が初めてベビーメタルの存在を知ったのは、2014/2015年ごろでした。記憶が正しい限りでは、ベビーメタルは世界の主要諸国でライヴを行っていて、世界中のメタラー(ヘヴィメタル愛好家の総称)がベビーメタルのパフォーマンスに熱狂していた映像を観たことがありました。

その映像で披露されていた曲とパフォーマンス、そして熱狂する観衆の姿を見た私は、正直に言ってドン引きしました。

アイドルグループで活動しているかのような可愛らしい10代の女の子が、メタルっぽい音楽を背景にダンスしながら、典型的なJ-POPのような日本語歌詞を歌っている光景があったからです。

 

この曲を聴いて、「ヘヴィメタルを馬鹿にしている、冒涜している」と思ったメタラーは私だけでなく、世界中にたくさんいたと思います。Youtubeのコメントだけでなく、様々なところでベビーメタルを批判するような内容を見聞きしていました。

それから4年ほどが経過し、私の意見は変わらないものの、ベビーメタルの人気は世界中でどんどん上がっていると感じました。日本国内でもベビーメタルのバンドTシャツを着た外国人観光客を頻繁に目にするようになりましたし、オランダのライヴ会場ではベビーメタルの音楽が好きだという人にも幾度となく会いました。

 

当時の私は、このベビーメタル人気は単純に一時的なものであり、日本文化好きやアニオタ以外のファンでは、物珍しさだったり笑いのネタとしてライヴに足を運んでいる人が大半なんだろうなという認識を持っていました。

もしかしたら、こうした感情を持っていたのはベビーメタルの音楽性を絶対に受け入れてはいけない、受け入れたくない私が勝手に作り上げていた幻想だったのかもしれません。

 

ライヴの概況

ベビーメタルのライヴ開場に行列を作って待つ人々

ベビーメタルのライヴ開場に行列を作って待つ人々 ※執筆者が撮影

私とガイドツアーを承った顧客の方がユトレヒトの会場に着いたのが16時過ぎごろで、開場まで残り3時間もあるにもかかわらず、数多くのファンが入口前に集まっていました。

日本人の方も数多く来ており、日本でも観れるベビーメタルのライヴをわざわざオランダまで観に来る人がこれほどいるとは思ってもいませんでした(話に聞くと、200人ほどの日本人が来ていたそうです)。

その後、開場となる19時ごろに再び開場前に移動すると、たくさんの人が行列を作って待っていました。オランダのライヴでこれほど数多くの人が行列を作って並んでいるのは見たことがありません。こうした光景は、ヨーロッパで行われるヘヴィメタル・ライヴでは非常に珍しいものです。開場前から並ぶなんて、よほどの大御所バンドや記念ライヴなどくらいしかないです。

 

ユトレヒトの会場内

ユトレヒトの会場内 ※執筆者が撮影

会場に入って、色々と見回してみると、驚くような光景が待っていました。それは、屈強なメタラーがわんさかいたことです。例えば、目の前にいたオランダ人メタラーは、男臭いヴァイキング・メタルを演奏するアモン・アマースのバンドTシャツを着ていました。そう、こうしたデスメタルを聴くような輩もベビーメタルの音楽を聴きに来ていました。

もちろん、会場の中には日本文化好きでベビーメタルのファンになっている人(黒Tシャツ着ていない)やアニオタファン(アニメキャラのTシャツ着てる)っぽい人も多数いましたが、それでも純粋にヘヴィメタルを愛するメタラーがたくさんいたことは間違いありません。

そして、年齢層・性別も非常に豊かで、60歳過ぎのおじさんもいれば、10代のような若者もいます。ただし、全体で見れば年齢層は非常に若いように感じました。

前座が始まる20時頃には、ユトレヒトの会場は満員(約2,000人ほど)となっていました。

 

定刻どおり、21時からライヴがスタートしたベビーメタル。イントロから会場は大盛り上がりで、一曲目から大きなモッシュピットができていました。モッシュピットの中を覗いてみると、いかにもメタラーというような長髪を揺らしながらヘドバンする人、Tシャツを脱いでタトゥーだらけの裸で激しくモッシュする人。私が立っていた会場後方では、曲に合わせてヘドバンしながら、メロイックサインをする人。

こんな光景は、まったく想像していませんでした。だって、J-POPみたいな歌詞とアイドルグループのようなビジュアルの女の子がダンスするライヴですよ?でも、この光景は本物でした。本当にみんなが盛り上がっている。そして、実はベビーメタルの音楽性に抵抗感を持っていた私も、一曲目を終えただけで、隣の同行者に「すごい良いですね!」と声をかけていました。

 

気づけば、ベビーメタルの曲に合わせて、私はヘドバンしていました。

冒頭でも言ったように、ベビーメタルは”似非メタルをやっている”と思っていましたが、まったく似非メタルではありません。ギター2人、ベース1人、ドラム1人の計4人の楽器演奏隊は、ビックリするくらいメタル・サウンドを鳴らしています。特に、ギターとドラムは本当に上手いなと感じました。

残念ながらヴォーカルの声質はやはり好きになれないものの、ライヴで実際に聴いてみるとヘヴィメタルのサウンドに違和感がまったくありませんでした。そして、ヴォーカル自身は歌がうまいです。楽器演奏隊にまったく負けない声量で計11曲、約1時間を歌い上げていました。

 

最後の曲を終えた後に、同行者の方には「ベビーメタルのライヴに連れてきてくれて、ありがとうございました!」と感謝してしまうほど、圧巻のパフォーマンスでした。

それと同時に、ベビーメタルに「メタル界にとって大きな可能性を秘めている」という同行者の意見に納得せざるを無いと感じました。そして、ベビーメタルがヨーロッパで受けがいい理由も分かりました。

 

ベビーメタルがヨーロッパ受けする理由

ライヴ終了後のアフター・パーティーに集まるファン

ライヴ終了後のアフターパーティーに集まるファン ※執筆者が撮影

ライヴが終わった後に会場向かい側のバーにて、アフターパーティーが企画されていたので同行者とともに顔を出してみました。

驚くことにアフターパーティーで話したファンの中には、オランダ国外からもイギリスやフィンランド、ノルウェー、ドイツ、そして遠くはウクライナからと各国から集まったコアなファンがいました。こうした光景を見ると、ヨーロッパ広域での人気に驚かざるを得ませんでした。

 

ライヴの公演やこうしたファンの存在を目にすると、ベビーメタルがヨーロッパ受けする理由がはっきりと分かりました。

  • 「ヘヴィメタル」要素が強い演奏→コアなメタラーを取り込める
  • 日本語の歌詞で歌うという奇異さ→外国人にとっての真新しさ
  • 日本文化の特徴となっている”Kawaii”要素が残っている→アニメなどの日本サブカルファンを取り込める
  • 「アイドル」に対する抵抗感の低さ→一般大衆に受け入れられやすい

 

ヘヴィメタルという音楽ジャンルは総じて世界的にマイナーでアンダーグラウンドなジャンルではあるものの、ヨーロッパ各国には数多くのメタラーがいます。例えば、EDMといったダンス・ミュージックが人気となっているオランダでも、ライヴ会場に行くと常にたくさんのメタラーがいます。

特にドイツやイングランドでは人口規模の違いがあるものの、多くのメタルバンドが数多くの都市でツアーをやっていることからも分かる通り、ヨーロッパ地域においてヘヴィメタルはそれほどアンダーグラウンドな音楽ジャンルではないように感じます。

 

反対に、日本で新たにファンを増やしてくのは難しいのではないかと私が思う点は、これら4つの要素があるからです。もちろん、日本でもメディアの露出度を増やしていけば、ファンはそれなりに増えていくのではないかとは思います。

けれども、もしベビーメタルが今回のユトレヒト公演で披露していたコスチュームやメイク、そして曲が表現しているヘヴィメタル的な要素を強めていくのであれば、日本よりもメタル人口が圧倒的に多く、市場規模も大きいヨーロッパやアメリカ、そして中南米を意識していけば、もっともっと世界的なブームにつながっていくのではないかと感じました。

 

ベビーメタルに抵抗感があるメタラーは、一度ライヴに足を運ぶべし!

ベビーメタルに抵抗感があるメタラーは、一度ライヴに足を運ぶべし!

※執筆者が撮影

当初ベビーメタルの音楽性に対して抵抗感があった私が言うのもなんですが、メタラーは一度彼らのライヴに足を運んだ方がいい!彼らのライヴに足を運んだからといって、無理やり好きになる必要も、ファンになる必要もない。

私も今回のユトレヒト公演を見たから、ベビーメタルを大好きになったわけでもないし、国外や長い距離を遠征してまでライヴを観たいとまではいかない。ただ、外見上でアイドルグループだから、ポップ・メタルのような似非メタルだからという偏見の壁を作り上げて、凝り固まった考えで「嫌いだ」と思い続ける必要はない、と自分自身に対する戒めとともに感じた。

 

ヘヴィメタルはアンダーグラウンドな音楽ジャンルであり、真新しいジャンルを毛嫌いする保守的なメタラーが多い。「こんな音楽はメタルじゃない!」「大衆受けするメタルバンドに成り下がった」などと揶揄することが日常茶飯事だ。私もそんなメタラーだ。

ただし、その影響で若いメタラーの人口は減少し、市場が縮小するに伴い、売れないメタルバンドは経済的に困窮する。売れたとしても、それほどの収益を見込めない。そして、70/80年代から活躍してきた大御所バンドであるアイアン・メイデンやメタリカなどに次ぐ世代がなかなか同レベルにまでの人気にたどり着けないでいる。

だから、数多くのバンドが大衆受けする音楽性にシフトし、新たなファンを獲得しようとする。例えば、イン・フレイムスやウィズイン・テンプテーションなどがいい例だ。また、メタルコアとエモの中間のようなバンドが続々登場して、世界的な人気を獲得している。

 

もし本当にヘヴィメタルという音楽ジャンルが今後も成長していくことを願うのであれば、ベビーメタルのような新しいジャンルにトライするバンドを毛嫌いすることなく、受け入れていく必要性があると改めて気が付かされた。ベビーメタルを入口として、”クラシックなヘヴィメタル”を好きになる新たなファンも出てくるのではないだろうか?

こうしたヘヴィメタルへの将来に対する可能性をベビーメタルは体現しようとしている、そのように感じさせるベビーメタルの初ライヴだった。

 

オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト。オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。


記事が気に入ったら
Kotaro Journalを "いいね!"
Facebookで更新情報をお届け。

Kotaro Journal

関連記事一覧

  1. ロシアW杯で台風の目となるか!?セルビア代表の魅力をまとめてみた!
  2. アーセナル本拠地エミレーツ・スタジアムの見学ツアーに参加する価値は大いにあり!
  3. 【レビュー】ベルギービール「シメイ」4種類で一番どれが美味しいの?
  4. ハーグ生まれのクラフトビール「Kompaan」が営業する工業地帯風ブルワリーバー

コメント

    • BMファン
    • 2018年 6月 09日

    今更感はありますが、BMにとって貴方のようなケースは割と多いようです。
    BMの良さは圧倒的にライブにあって、最初に拒否反応してしまった人には音源やMVだけではわかり難いようです。
    ちなみに、Judas PriestのRob Halford(メタルゴッド)が、アメリカのAP Music Award 2016のステージで、BMと一緒にBreaking the RawとPainkillerを歌い、その後のBMとの共同インタビューで、BMの三人を指して「メタルの未来はここにある」と語ったことを申し添えておきます。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

執筆者のプロフィール

Kotaro

フリージャーナリスト&英語・セルビア語通訳者
ブログ運営者のプロフィール

オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト

オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。

お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。

大学時代に旧ユーゴスラヴィア史を研究し、1年間セルビアに留学。旧ユーゴ史研究者に少し憧れたものの諦める。現在は、オランダ・セルビアに特化した記事を書くフリージャーナリストとして活動。

お仕事の相談はこちら

詳細なプロフィール

セルビア中毒便り

海外送金にオススメ!

手数料激安の海外送金

最新の記事

  1. ロシアW杯で台風の目となるか!?セルビア代表の魅力をまとめてみた!
  2. ベオグラードで最も古い「新墓地[Novo groblje]」を訪れる
  3. ベビーメタル嫌いだった私が、蘭ユトレヒト公演で感じたもの

海外旅行のホテル検索はこちら!

執筆者が推薦したい社会派記事



ピックアップ記事

  1. De Haagse Markt
  2. ベオグラード大学が開講する「外国人向けセルビア語講座」を受講した留学体験談
  3. オランダの選挙制度
  4. 【レビューあり】ノンアルコールビール「ハイネケン0.0」が世界を驚かす?
  5. 【オランダ開催】「スレブレニツァの虐殺」追悼記念式典で目の当たりにした人々の涙

FOLLOW ME!!

ハーグ観光のお手伝い

ハーグ在住日本人がハーグ観光をお手伝い

PAGE TOP