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私がセルビア人女性と国際結婚して直面した民族問題

私がセルビア人女性と国際結婚して直面した民族問題

国際結婚をすると、文化や言葉の違い、居住地をどうするか、将来生まれてくる子供の教育など様々な問題があるとしばしば言います。

私がセルビア人女性と国際結婚したことによって、上述した問題とは異なる問題に出くわしてきました。

 

その問題とは、「民族問題」です。

 

以下では、私がセルビア人女性と国際結婚してこれまでに直面してきた3つの民族問題を例に挙げてお話ししようと思います。

 

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クロアチアに住むことは危険

クロアチアの観光地スプリット

クロアチアの観光地スプリット ※執筆者が撮影(2013年時)

近年では日本人の間でも夏季休暇の観光旅行先として、大人気になっているドゥブロヴニクやスプリットなどのクロアチア・アドリア海沿岸地域(ダルマチア地域)。オランダ在住の日本人の間でも、夏休暇先として訪れる人も多いみたいですね。

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例えば、上記の記事ではクロアチアは治安が良い国とされていますが、必ずしも「すべての人」にとって治安が良い国だというわけではありません。

 

あまり知られていないことですが、クロアチアはセルビア人にとっては治安が良い国というわけでは決してありません。なぜならば、クロアチア人の中には反セルビア人感情(Serbophobia)を持つ人が存在し、セルビア人という理由で暴行を加えられたりすることがあるからです。

では、なぜクロアチア人の中に強烈な反セルビア人感情を持つ人が存在するのでしょうか?

その背景には、セルビア・クロアチア両民族の間で昔から民族問題が大きな課題となってきた歴史があります。クロアチアの現代社会に大きな影響を与えているのは、1990年代に起きた旧ユーゴスラヴィア紛争でセルビア人とクロアチア人の間で互いに殺し合った歴史があることや、当時のクロアチア政権によってセルビア人憎悪を募らせるプロパガンダ政策が広く行われていたことなどが影響しています。

 

こうしたクロアチア人の中にある反セルビア人感情は、旧ユーゴスラヴィア紛争が終結してから20年以上が経った現在でも、地域によって根深く残っているところがあります。

例えば、セルビアとの国境に近い街ヴコヴァルは反セルビア人運動が非常に盛んであるため、セルビア人が立ち入ることは非常に危険だとされています。

ヴコヴァル以外にも、オシイェク、シサク、クニン、シベニク、そして観光地であるスプリットやドゥブロヴニクや首都のザグレブでさえも、セルビア人は観光の際に注意するようにと、政府機関から警告が数年前に出されていたことを憶えています。

特に注意すべき点は、上述した街にセルビアナンバーの車で入国することです。上記の街でセルビアナンバーの車を駐車していると・・・放火されたり、破壊されたりする危険性があると言われています。

セルビアナンバーの車

(イメージ)セルビアナンバーの車 出典:https://www.slobodnaevropa.org/

 

2013年の夏休みを利用して、妻にクロアチアの観光地スプリットに行こうと提案したところ、妻は当初拒否していました。理由は、日本人の間でも大人気となっているスプリットでさえも、反セルビア人感情を持つクロアチア市民が多いからです。

妻の両親は、娘の身の安全を心配していたため、なんとか僕が説得して一緒にスプリットへ旅行に行くことが決まりました。しかしながら、妻と話し合った条件は、「クロアチア滞在中はセルビア語で会話しない」ことでした。

セルビア語とクロアチア語は、旧ユーゴスラヴィア時代に一つの言語「セルボ・クロアチア語」として存在していた歴史からも分かる通り、方言的な差異のみで同一言語と言っても間違いではありません。

同一言語とはいえ、表現の仕方や母音が軟音化するなどの違いがあるため、話している方言でどこ出身なのかは見当がつきます。そのため、クロアチアで妻がセルビア語を話していると、クロアチア人はすぐに妻がセルビア人だと認識するでしょう。

 

スプリットには1週間ほど滞在して、最終的には何のトラブルに巻き込まれることはありませんでした。

しかしながら、街中で反セルビア人スローガン「スルべ・ナ・ブルベ」(セルビア人を首吊りにしろ)と壁に大きく落書きされていることを実際に見た妻は、そういったスローガンが街中に描かれていることは前から知っているものの、動揺せざるをないですよね。

 

 

私たち夫婦2人ともスプリットをとても気に入り、将来暮らしたい街として第1位となっていますが、現状を考えると難しいと感じます。叶うときは、クロアチア人の中から完全に反セルビア人感情が完全に消えたときだけになります。

 

コソヴォを巡る民族問題

コソヴォのセルビア人居住区とアルバニア人居住区を分断するイバル川にかかる橋

コソヴォのセルビア人居住区とアルバニア人居住区を分断するイバル川にかかる橋 ※執筆者が撮影(2012年時)

2008年にセルビア共和国から独立を宣言した同国南部に位置するコソヴォ共和国とその独立を認めないセルビアの問題は、昔からずっと非常に複雑です。

最近では、カタルーニャ州がスペイン王国から独立をしようとする動きとそれに反対するスペイン中央政府との関係が、当時のコソヴォ問題と似ているために「第二のコソヴォ問題」と取り上げられていたことが記憶に新しいです。

ご存知の方はご存知だと思いますが、多くのセルビア人はコソヴォ系アルバニア人に対して悪い印象を持っています。これまでセルビアの一部だった地域が独立を果たすためにコソヴォ系アルバニア市民たちがセルビア政府に対して武力行動を開始し、コソヴォ地域に住むセルビア人を強制追放する事件が起きていたコソヴォ紛争。

また、コソヴォ紛争最中だけでなくその前後でも、コソヴォ系アルバニア人マフィアによるセルビア人の誘拐および臓器売買といった組織的犯罪が行われていたこともあり、セルビア人がコソヴォ系アルバニア人に対して良い印象を持てない理由は多分にあります。

2012年に私がコソヴォを訪れた時の印象をまとめた記事
→「セルビア人居住区側から見る「コソヴォ」《前編》
→「セルビア人居住区側から見る「コソヴォ」《後編》

 

妻もこうしたセルビア人のうちの一人といっても過言ではありません。もちろん、本人の口から「アルバニア人が嫌いだ」という発言を聞いたことはありませんが、良い印象は抱いていないことは確かです。

妻はこれまで一度もコソヴォ系アルバニア人と接したことがありませんが、育ってきた地理的環境とメディアが報じる映像、周りから聞こえてくる話などを通じて、妻だけでなく多くのセルビア人の心の中に悪い印象として強く刻み込まれています

妻に対して、「こうした考え方は固定観念であり、実際にアルバニア人と接してみないと分からないよ」とも私は何度も言っています。けれども、妻の心の中に刻み込まれたイメージは簡単に変わりません。それだけ、妻だけでなくセルビア人の心の奥底に「トラウマ」のような形で残ってしまっているからです。

 

私がセルビアに留学していた時に、コソヴォの実情を自分の目で確かめるべく、一度コソヴォを訪れることがありました。コソヴォを訪れることを妻(当時は彼女)に伝えたところ、「あんな危険地帯のコソヴォに行く意味が分からない」と言われて、少し喧嘩した記憶があります。

また「セルビア人でアルバニア語を勉強している学生」のインタビュー記事をセルビア語から日本語へ翻訳している時も、「彼女(その学生)が好きな言語を選択して勉強することができるけれども、なんでアルバニア語なんか選択するのか意味が分からない」と冷たい反応を示していました。

※インタビューの翻訳記事
「アルバニア語を学ぶセルビア人学生が直面する民族問題と心に抱く葛藤の物語」

 

現在も妻は「コソヴォ=危ない地域」であり、「コソヴォ系アルバニア人=セルビア人を嫌っている」と思っていますが、将来的にはこうした偏見を解消して一緒にコソヴォの地へ足を運ぶことができたらいいのになと思っています。

オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト。オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。


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大学時代に旧ユーゴスラヴィア史を研究し、1年間セルビアに留学。旧ユーゴ史研究者に少し憧れたものの諦める。現在は、オランダ・セルビアに特化した記事を書くフリージャーナリストとして活動。

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