KOTARO JOURNAL

【総括】オランダ総選挙の結果をまとめてみた!

オランダ総選挙で勝利したVVD党首マルク・ルッテ

3月15日(水)に行われたオランダ総選挙(下院議会選挙)の結果、前回2012年の同選挙で下院議会最多議席数を獲得し第1党となり、前政権の首相だったマルク・ルッテ率いる自由民主国民党(VVD)が再度勝利することが決定しました。

今回のオランダ総選挙は、反イスラム・反移民を掲げるヘルト・ウィルダース率いる右派政党オランダ自由党(PVV)が昨年末の世論調査から支持率を伸ばし、下院議会第1党になる勢いがあったために世界中から注目を集めていました。

下院議会があるビネンホフ前の広場に集う多くのメディア

【総選挙当日の午前】下院議会があるビネンホフ前の広場に集う多くのメディア ※執筆者が撮影

 

これほど世界中のメディアがオランダ総選挙に注目していたことは、これまでにはなかったことだと思われます。何故これほどまでに注目を浴びていたのか。その理由は、反イスラム・反移民を掲げるオランダ自由党が総選挙に勝利する=下院議会第1党となることは、現在ヨーロッパ各地で台頭する右派政党やポピュリズム党の流れを大きく後押しすることに繋がる可能性があるからです。

特に、4~5月に行われるフランス大統領選挙を始め、9月末に予定されているドイツ連邦議会選挙では右派政党の候補者やポピュリズム政党が躍進していると多くのメディアが報じ、ヨーロッパの主要国で右派政党が第二次世界大戦以降初めて政権を握ってしまう可能性を人々が危惧していました。

そうした不安を押しのけるかのように、オランダ国民の有権者のうち約82%が投票した今回の選挙で、反イスラム思想を扇動する右派政党に事実上の「NO」を叩きつけたことは、今後のヨーロッパ社会に明るい兆しをもたらしたと思います。

投票所に並ぶ有権者の列

投票所に並ぶ有権者の列 ※執筆者が撮影

 

今回の記事では、オランダ総選挙投票日までの状況を振り返りながら、選挙結果をまとめてみたいと思います。

 

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オランダ総選挙投票日までの世論調査

オランダ総選挙の世論調査

オランダ総選挙の世論調査 出典:I&O Research

上図はI & O調査会社が行ったオランダ総選挙前の世論調査で、20161210日時(左側の薄い青色)と投票日前日に当たる2017年3月14日時(右側の濃い青色)の比較分析表になります。

赤枠で囲まれた部分が反イスラム・反移民を掲げる右派政党オランダ自由党(PVV)の支持率であり、201611月8日に行われたアメリカ大統領選挙にてトランプ候補(現アメリカ大統領)が勝利した後から急速に支持率を上昇させていき、1210日時の世論調査では過去最大となる33議席を獲得する支持率にまでに至りました。

この頃から、世界中のメディアがオランダ国内での右派政党の躍進やオランダ自由党首ヘルト・ウィルダースを「オランダのトランプ」と愛称で呼んだりする等、注目度がグンっと上がっていた記憶があります。

しかしながら、2017年1月に入ってから支持率が徐々に下がり、オランダ総選挙の投票日前日に当たる3月14日時の世論調査では、最大の支持率まで上がっていた数ヶ月前よりも2分の1にまで支持率を下げてしまうことになりました。

このことから、オランダ自由党(PVV)の支持基盤は脆弱であり、国内外の政治的・社会的変化からの影響から政治的立場が変わる有権者の一時的な「受け皿」となっていただけに過ぎないという見方が出来ます。

反対に、前政権与党で下院議会に最多議席数を保持していた自由民主国民党(VVD)は、2016年始まりから最後の世論調査までの支持率は2328議席と大まかに一定していました。つまり、多くの自由民主国民党(VVD)の支持者は国内外の政治的・社会的変化からの影響を受けずに、自身の政治的立場を保持し続けていたということになります。

上記で述べた総選挙前の状況を踏まえて、以下でオランダ総選挙の最終開票結果を見てみましょう。

 

オランダ総選挙の最終開票結果

オランダ総選挙の最終開票結果

上図の見方

  • 青色棒2017年(今回)のオランダ総選挙における各党の獲得議席率(議席数)
  • 灰色棒2012年(前回)のオランダ総選挙における各党の獲得議席率(議席数)
  • オランダ国内の地図(右側):最大議席率を獲得した政党を色分けした地域図

 

上図の開票結果から、自由民主国民党(VVD・中道右派)が33議席を獲得し下院議会第1党、オランダ自由党(PVV・右派)が20議席を獲得し第2党、キリスト教民主党アピール(CDA・中道)と民主66(D66・中道左派)の両党が19議席を獲得し第3党となることが判明しています。

オランダ自由党(PVV)は、前回の選挙から5議席を増やしましたが、下院議会第2党という結果は党首ヘルト・ウィルダースが望んでいたものではないはずです。特に、今回の選挙でライバルであった自由民主国民党(VVD)との差は13議席ということで、事実上の「選挙戦敗北」という結果に終わりました。

選挙結果翌日にインタビューを受けるオランダ自由党首ヘルト・ウィルダース

選挙結果翌日にインタビューを受けるオランダ自由党首ヘルト・ウィルダース

 

今回の選挙結果を前回のものと比較してみると、VVDが選挙戦を勝利したとは言え、圧倒的な勝利というほどでもなく、前回よりも8議席を失う結果となっています。また、前回の総選挙で38議席を獲得し、VVDと連立政権を組んで政権与党であった労働党(PvdA・中道左派)が、今回大敗北(9議席のみ獲得)を喫した事実は、VVDにとっても大きな痛手です。

オランダの選挙制度は政党名簿比例代表制を採用しており、1政党が議会全体の議席(150議席)の過半数以上(76議席)を獲得することは基本的にありません。そのため、主に議会第1党となる政党を中心に複数の政党からなる連立政権を組織して、下院議会の76議席を保持する必要性があります。

そのため、今後は議会第1党となるVVD(33議席)を中心にして他政党と連立政権を組んでいく交渉が始まります。メディアの大方の予想では、今回の連立政権は、VVD(33議席)+CDA(19議席)+D66(19議席)+CU(キリスト教同盟・5議席)=76議席を保持する連立政権が組まれると言われています。

※総選挙後の連立政権が組織される流れは、以下の記事にて詳細に説明しています。

 

新たな政党の躍進

実は今回のオランダ総選挙では、既存の主要政党ではなく「新勢力」として新たな政党の躍進が非常に注目されています。

以下では、今回躍進した3つの政党を簡単に紹介したいと思います。

 

フルンリンクス党 GroenLinks(オランダ緑の党・左派)

フルンリンクス党(オランダ緑の党)の躍進

フルンリンクス党首イェッセ・クラーヴァー

フルンリンクス党(別名:オランダ緑の党)は、前回の選挙時の4議席から大幅に増加して、今回の選挙では14議席を獲得しました。この増加率は、今回の選挙に参戦した28政党で圧倒的に1番であり、実質最大の勝利者と言えます。

フルンリンクス党は、主に「環境保全」「社会的平等」「寛容」を掲げる政党であり、党首イェッセ・クラ―ヴァーは30歳の若さながら党首として選挙戦を戦ってきました。彼は、父親がモロッコ系、母親がオランダ人とインドネシア人のハーフという民族的背景があります。

彼らの支持基盤は、主に学生などの若者が主体であり、選挙戦後のイェッセ・クラーヴァー党首による勝利宣言も非常に若々しい印象を受けました。

 

デンク Denk(中道左派)

デンクの主要メンバー

デンクの主要メンバー2人

デンク党は、上写真のトルコ系オランダ人2人が2015年2月に創設した若い政党になります。デンクはオランダ語で「考える」、トルコ語で「平等性」を意味しています。

上記2人はもともと労働党(PvdA)に所属する下院議会議員でしたが、同党との意見の対立で離党し、今回はデンク党として総選挙に参戦していました。結果的に、「新たな政党」としての初参戦ながらも3議席を獲得する躍進を遂げています。

 

民主主義のための広場党(FvD・右派)

民主主義のための広場党首

民主主義のための広場党は、もともと政策の研究機関として2015年に創立されましたが、今回の総選挙に政党として公式に参戦しました。

掲げる政策は、既存主要政党による「政党カルテル」を打ち破ることや反EUとしてオランダのEU離脱を訴えています。今回の選挙は初参戦ながら2議席を獲得しています。

 

これら3政党の躍進は、今後のオランダ国内政治に新たな旋風を巻き起こすことが期待されている証と言えます。

 

まとめ

デンハーグ鉄道駅前の選挙ポスター

デンハーグ鉄道駅前の選挙ポスター ※執筆者が撮影

今回の選挙結果を受けて、大多数のオランダ国民だけでなくヨーロッパ主要国の政府はほっとしたのではないかと思います。特に来月4月に大統領選挙が迫っているフランスでは特に。

今回のオランダ総選挙で改めて見えたことがあります。それは、オランダ国民が持つ「賢さ」「自由主義の精神」です。

まず「賢さ」が意味するもの。多くのメディアがヘルト・ウィルダースが選挙戦を優位に進めている等のニュース記事を報じて、一時は本当にヘルト・ウィルダース率いるオランダ自由党が選挙戦を勝利するのではないかという雰囲気が流れていました。それにかかわらず、多くのオランダ国民はメディアに流されず、最終的には自身の政治的意見を反映する政党に投票していた「賢さ」です。

「自由主義の精神」が意味するもの。「移民に寛容」であり歴史的に「多様性」を重視してきたオランダ国民が、「民族」や「宗教」で個人を差別することに対する「嫌悪感」を心の中で持ち、反イスラム・反モロッコ人やトルコ人を掲げるヘルト・ウィルダースの政治的思想を受け入れなかった「自由主義の精神」です。

 

以上、今回のオランダ総選挙を簡単に振り返ってみました。

 

オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト。オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。


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大学時代に旧ユーゴスラヴィア史を研究し、1年間セルビアに留学。旧ユーゴ史研究者に少し憧れたものの諦める。現在は、オランダ・セルビアに特化した記事を書くフリージャーナリストとして活動。

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