KOTARO JOURNAL

旧ユーゴ諸国民が世界的リーダーに持つ印象の違いから、国民意識の背景を探る!

旧ユーゴ諸国民が世界的リーダーに持つ印象の違いから、国民意識の背景を探る!

スイスの首都チューリッヒに拠点を置く世論調査組織「Gallup International Association」が、2017年度末に世界55カ国で行った「世界的リーダーに対する印象」世論調査結果が発表されました。

この世論調査は、トランプ米国大統領やプーチン露大統領、メルケル独首相など計12名の世界的リーダー(安倍首相は含まれていません)に対して、55カ国の国民はどのような印象を持っているのかを調査したものになります。

 

発表された世論調査を見る限り、かつて旧ユーゴスラヴィア連邦(※)を築き上げてきた6カ国の構成諸国(モンテネグロを除く)でも、それぞれの世界的リーダーに対して持っている印象は大きく異なることがはっきりと浮かび上がる結果でした。

※旧ユーゴスラヴィア構成諸国:スロヴェニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ(以下、ボスニア)、セルビア、コソヴォ、モンテネグロ、マケドニアの7カ国。ただし、モンテネグロは世論調査国の対象外となっていたため除く。

 

今回の記事では、この「世界的リーダーに対する印象」世論調査の結果を基に、旧ユーゴスラヴィア諸国(以下、旧ユーゴ諸国)の国民が「どの世界的リーダーに対して好意的な印象を持っているのか」、反対に「どの世界的リーダーに否定的な印象を持っているのか」を比較分析して、その国民意識の背景にはどのような事情があるのかを解説したいと思います。

また参考資料として、世論調査が同様に行われた日本と現在私が居住しているオランダの調査結果も明記します。オランダの調査結果は、西ヨーロッパ諸国民が持つおおよその印象として捉えることができると思います。

 

【注記】

この統計調査の対象となった諸国は世界の計55カ国で、各国につき約1,000人の男女に街頭(23カ国)または、電話(13カ国)、オンライン(19カ国)での調査が行われました。回答を得られた調査人数の合計は53,769人となっています。

この世論調査は2017年の10月から12月にかけて行われ、調査結果による誤差は約+3%からー5%、95%の正確性があるとしています。

 

スポンサーリンク

調査対象となった12名の世界的リーダー

「世界的リーダーに対する世論調査2017」における全体の結果

「世界的リーダーに対する世論調査2017」における全体の結果 出典;Gallup International’s 41st Annual Global End of Year Survey

上記の表は、行われた世論調査の全集計結果となります。

 

この世論調査の対象となった12名の世界的リーダーは、メルケル首相(独)、マクロン首相(仏)、モディ首相(インド)、メイ首相(英国)、習近平国家主席(中国)、プーチン大統領(露)、アブドゥルアズィーズ国王(サウジアラビア)、ネタニヤフ首相(イスラエル)、エルドアン大統領(トルコ)、トランプ大統領(米国)、フランシス教皇(ローマ法王)となっています。

この世論調査の全体結果を見てみると、ローマ法王を除いてメルケル首相とマクロン首相、プーチン大統領が50%に近い高い割合で「好意的」な評価を得ています。

反対に、世界で何かと話題を振りまいているトランプ大統領は58%と非常に高い割合で「否定的」な評価を得ていることが分かります。

この調査結果の概要およびレポート資料は、こちらの公式サイトからダウンロードして読むことができます。

 

今回の記事で注目する世界的リーダーは、トランプ大統領、プーチン大統領、メルケル首相、習近平国家主席、トランプ大統領の計5名に絞らせてもらいます。

 

トランプ大統領(アメリカ)

 
 
トランプ大統領(アメリカ)

トランプ大統領(アメリカ) 出典:TIME

国名好意的否定的
スロヴェニア14%82%
クロアチア17%73%
ボスニア27%67%
セルビア32%57%
コソヴォ47%26%
マケドニア43%47%
日本18%64%
オランダ8%81%

まずは、多くの人が一番関心を持っているであろうトランプ大統領から見ていきたいと思います。

旧ユーゴ諸国の中でも、ヨーロッパ連合(EU)に加盟を果たしているスロヴェニアとクロアチアの国民がトランプ大統領に対して「否定的」と回答する割合が高いのに対し、コソヴォやマケドニアでは対象的に「好意的」と回答する割合が高くなっています。

ヨーロッパ連合に加盟している前者の国々は、基本的に西ヨーロッパの外交姿勢に同調する傾向があることから「否定的」と回答する割合が高いことは、オランダの数値(81%)を見てもらえれば理解することができるはずです。

では、なぜコソヴォやマケドニアでは全体の結果(31%)に相反して、トランプ大統領に「好意的」と回答する割合が高いのでしょうか?

 

コソヴォの首都プリシュティナには、クリントン元米国大統領の銅像が建っている

コソヴォの首都プリシュティナには、クリントン元米国大統領の銅像が建っている 出典:CNN

コソヴォに関しては、1990年代後半に起きたセルビアとのコソヴォ紛争で当時のクリントン米国大統領が軍事的・経済的援助を行い、紛争が集結してからもコソヴォの独立などに際して国際的に協力してきた密接な外交関係が世論にも大きく影響していると思われます。

こうした歴史的背景を踏まえても、「好意的」と回答した割合は少ないと私は思っています。もしアメリカ大統領がヒラリー・クリントン大統領だったら、80%を超える回答者が「好意的」と回答していると思います。

やはり、コソヴォ国民の間でもトランプ大統領を好ましく思っていない人々が多いということが分かる結果です。

 

マケドニアに関しては、近年のマケドニア政府はアメリカが主体となっているNATO軍に加盟する準備を推進している影響でアメリカに対する好意的な印象を持つ人が多いことや、マケドニア人口の約4分の1をアルバニア人が占めており、アルバニア人はコソヴォの問題も関連してアメリカに対する好意的な印象を持つ割合が高い(アルバニアでは64%が「好意的」と回答)ことの2つが影響しているかと思います。

 

実は、セルビアでの世論調査結果に大きな驚きがありました。実は、アメリカ大統領選挙中においてセルビアは、世界でも珍しくトランプ大統領を支持する人が多かった国の一つでした。

※詳細に関しては、以下の記事を読んでみてください。
「東欧の小国セルビアで巻き起こるトランプ米国大統領ブーム?」

その一方で、今回の世論調査では「否定的」と回答する割合が非常に高いことから、アメリカ大統領選挙期間中にトランプ大統領を支持する声が目立ったのは、対立候補者がセルビア人にとって悪い印象が強い人物ヒラリー・クリントン氏だったからということになります。

 

プーチン大統領(ロシア)

プーチン大統領(ロシア)

プーチン大統領(ロシア) 出典:WhashintonPost/ Ivan Sekretarev

国名好意的否定的
スロヴェニア42%52%
クロアチア52%34%
ボスニア53%40%
セルビア81%13%
コソヴォ10%59%
マケドニア53%38%
日本10%63%
オランダ10%75%

次に、ロシアのプーチン大統領の世論調査結果を見てみましょう。

 

上記の結果を見て一番目が行くところは、セルビアの「好意的」と回答した割合が81%という非常に高いことです。

セルビアとロシア両国間は歴史的・宗教的・政治的に深い繋がりを持ってきた経緯があることから、多くのセルビア人はロシア人を「兄弟」として捉える傾向が非常に強いです。

そして、EU加盟を目指すセルビア現政権も西ヨーロッパ諸国に接近しながらも、依然としてロシアとの強い絆を解こうとはしません。ベオグラードの街中に行くと、プーチンの顔写真が移ったTシャツを販売している光景を見かけます。

ベオグラード中心街の露天に並ぶプーチン大統領の顔写真付きTシャツ

ベオグラード中心街の露天に並ぶプーチン大統領の顔写真付きTシャツ ※執筆者が撮影(2017年時)

 

反対に、コソヴォで「好意的」と回答する割合が非常に少ない(10%)理由は、ロシアがコソヴォ独立を承認していない点と同様にコソヴォ独立を承認しないセルビアを後押しする唯一の国がロシアだからです。

 

上述したこれらセルビアとコソヴォ以外の旧ユーゴ諸国では、「否定的」と回答する割合が高いだろうと推測しましたが、蓋を開けるとそんなことはありませんでした。この点は、非常に意外でした。

この背景に隠された理由をあとで調査したいと思います。

 

次のページでは、メルケル首相、習近平国家主席、エルドアン大統領に対するイメージを見ていきます!

オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト。オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。


記事が気に入ったら
Kotaro Journalを "いいね!"
Facebookで更新情報をお届け。

Kotaro Journal

関連記事一覧

  1. 法廷通訳者が語る旧ユーゴスラヴィア国際戦犯法廷20年間の歴史
  2. 大量虐殺が起きたスレブレニツァを「悲劇の街」から「希望の街」へ変えるプロジェクト
  3. 【11月29日開廷】旧ユーゴスラヴィア国際戦犯法廷を一緒に傍聴しませんか?
  4. 【ボスニア紛争】スレブレニツァの少女とその父に起きた悲劇の物語
  5. 【ロシアW杯】セルビア代表VSスイス代表戦は要注意カード?

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

執筆者のプロフィール

Kotaro

フリージャーナリスト&英語・セルビア語通訳者
ブログ運営者のプロフィール

オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト

オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。

お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。

大学時代に旧ユーゴスラヴィア史を研究し、1年間セルビアに留学。旧ユーゴ史研究者に少し憧れたものの諦める。現在は、オランダ・セルビアに特化した記事を書くフリージャーナリストとして活動。

お仕事の相談はこちら

詳細なプロフィール

セルビア中毒便り

海外送金にオススメ!

手数料激安の海外送金

最新の記事

  1. 世界最大のピート・モンドリアン展ーハーグ市立美術館に行ってみよう!
  2. ヘヴィメタル初心者に聴いてもらいたいオススメ曲10選
  3. 低賃金で働くセルビア出身のDMM英会話講師たちが提起する問題
  4. 「平和の行進2018」&スレブレニツァの虐殺「23周年追悼式典」を写真で振り返る【オランダ・ハーグ】
  5. ナチス軍の生々しい歴史を展示するトポグラフィー・オブ・テラー博物館【ベルリン】

海外旅行のホテル検索はこちら!

執筆者が推薦したい社会派記事



ピックアップ記事

  1. セルビアはヨーロッパで最も人種差別が少ない国なのか?
  2. ヒートホルン村が中国人観光客に人気な理由
  3. 海外移住
  4. 海外在住者がブログで日本語の文章を書きながらアウトプットする恩恵

FOLLOW ME!!

ハーグ観光のお手伝い

ハーグ在住日本人がハーグ観光をお手伝い

PAGE TOP