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【1月7日に祝う】東欧セルビアのクリスマスは西方教会圏とは大きく異なる!

【1月7日に祝う】東欧セルビアのクリスマスは西方教会圏とは大きく異なる!

東ヨーロッパに位置するセルビアの国民の大多数を占めるセルビア人(約83%)は、主に東方正教会に属するセルビア正教を信仰しています。

実は、セルビア正教会ではカトリックやプロテスタントなどの西方教会とは異なるカレンダーでクリスマスを祝い、その祝い方にも西方教会圏とは異なる点が多々あります。

これまでに何度かセルビア人の妻の実家にてクリスマスを一緒に祝ってきた私が、セルビアでどのようにクリスマスが祝われているのかを紹介したいと思います。

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クリスマスは12月25日ではなく、1月7日に祝う

セルビアで祝われるクリスマスの様子

セルビアで祝われるクリスマスの様子 Foto: Alo!/Ana Paunković

日本でも商業的な側面からクリスマスが国民の大きな関心ごとの一つとして、12月25日に祝われており、カトリックやプロテスタントなどの西方教会もクリスマスは12月25日に祝われています。

しかしながら、主にセルビア正教を信仰するセルビア人は12月25日にクリスマスを祝いません。

なぜならば、セルビア正教会はユリウス暦(旧暦)を現在も使用しているため、クリスマスは西方教会のそれよりも13日遅れとなる1月7日に祝われます。新年が明けた1月7日にクリスマスを祝うという文化を聞いたことがない人も多いかと思いますが、ユリウス暦を使用する東方正教会グループ(例:ロシア正教会)にとって、クリスマスは12月25日ではないのです。

反対に、東方正教会でもギリシャ正教会やブルガリア正教会、ルーマニア正教会は世界各国で使用されている通常の暦であるグレゴリオ暦(新暦)との日にちのズレが生じていない修正ユリウス暦を採用しているため、これらの正教会を信仰している国民は12月25日にクリスマスを祝います。

そのため、正教徒であるギリシャ人やブルガリア人、ルーマニア人たちは同じ正教徒であるセルビア人やロシア人とは異なって、西方教会を信仰する人々と同様に12月25日にクリスマスを祝う文化があります。

クリスマスの名称と挨拶

セルビア正教会の修道院の中

セルビア正教会の修道院の中 ※執筆者が撮影

さて、セルビア正教徒にとってクリスマスは1月7日であるため、クリスマス・イヴは1月6日となります。

セルビア語でクリスマスは「Božić(ボジッチ)」と言います。あまり聞き慣れない単語であり、クリスマスとは大きくかけ離れた単語であるため、まったくクリスマスという感覚が伝わらない名称だと思うかもしれません。

しかしながら、セルビア語で「神」を「Bog(ボグ)」と言い表します。そして、セルビア語でクリスマスを指す「Božić」は、神を指す「Bog」を可愛らしく表現(指小辞)した名称(BogBožić)となります。

よく考えてみると、クリスマスとはキリスト教の神であるイエス・キリストの誕生を祝う祭りであるため、当時生まれたばかりのイエス・キリストはまだ赤ん坊だったはずです。そのため、当時の可愛らしい赤ん坊だったイエス・キリストに愛情を込めた表現を使って、セルビア語ではクリスマスを「Božić(ボジッチ)」と言うようになったのではないかと勝手に推測しています。

西方教会圏の国々で西方教会を信仰する人々とクリスマスを祝った経験があまりないために、西方教会のクリスマスの挨拶は一つしか知りません。多くの人が知っているように、西方教会のクリスマスの挨拶は「Merry Christmas(メリー・クリスマス)」という常套句があります。

セルビアは、もちろん英語圏ではないために上記の常套句「メリー・クリスマス」と挨拶することはありません。セルビア語では「Srećan Božić(スレチャン・ボジッチ)」と言います。その意味は、メリー・クリスマスと同じです。

「Mir Božji, Hristos se rodi!(ミル・ボジィイ・フリストス・セ・ローディ!)」とキリル文字で書かれたメッセージカード

「Mir Božji, Hristos se rodi!(ミル・ボジィイ・フリストス・セ・ローディ!)」とキリル文字で書かれたメッセージカード

それに加えて、セルビアではクリスマス当日に別の言い方でイエス・キリストの誕生を祝う挨拶があります。

それは、「Mir Božji, Hristos se rodi!(ミル・ボジィイ・フリストス・セ・ローディ!)」と言う挨拶の方法です。

この挨拶を言われた人は、返答として「Vaistinu se rodi!(ヴァイスティヌ・セ・ローディ!)」と言います。

それぞれの意味は、以下の通りになります。

セルビア語「Mir Božji, Hristos se rodi!」
日本語「神の平穏が訪れますように!イエス・キリスト様がお生まれになった!」

セルビア語「Vaistinu se rodi!」
日本語「本当にイエス・キリスト様がお生まれになった!」

例えば、2018年度においてセルビアのアレクサンダル・ブチッチ大統領は自身のツイッターにて、セルビア語の公用文字であるキリル文字で上述した挨拶をしています。

クリスマス・イヴの過ごし方

実は、私の妻はセルビア人であるものの、セルビア正教徒ではなく、プロテスタントです。妻の両親や他家族はセルビア正教徒であるものの、妻本人は高校生の年齢ごろにセルビア正教の教えに嫌気がさして、個人でプロテスタントに改宗しています。

そのため、妻本人からはセルビア正教会のしきたりに合わせたクリスマスの祝い方は聞いていないので、妻の家族とクリスマスを祝った時に見たものや聞いたものを中心にまとめます。

前述したように、セルビア正教会が使用しているユリウス暦で1月7日はクリスマス・イヴとなっており、セルビア語でクリスマス・イヴは「Badnji dan(バドゥニィ・ダン)」と呼ばれています。

この呼び方は、セルビア正教会でクリスマスで祝われる際に重要なアイテムである「Badnjak(バドゥニャク)」というオークの枯れ木をクリスマス・イヴ当日の夜に燃やす伝統から由来していると思われます。

ベオグラードの街中で販売されている「バドュニャク」

ベオグラードの街中で販売されている「バドュニャク」 ※執筆者が撮影

この「バドゥニャク」は、宗教的伝統としてクリスマス・イヴの当日の朝早くに家族の男たちが外に出かけて、オークの木から夜に燃やす分を切り落として家に持ち帰る行事があり、この行為は家族にその年の平穏と健康をもたらすとされているようです。

しかしながら、現代ではこの「バドゥニャク」=オークの木から切り落とされた小さな枯れ木は街中のいたるところで販売されており、多くの家々は街中で「バドゥニャク」を買うだけとなっています。

田舎町に行くと、このクリスマス・イヴの早朝に男たちがオークの木を切りに行く風習はより強く残っているかもしれません。

「バドゥニャク」をセルビア正教会で燃やす

「バドゥニャク」をセルビア正教会で燃やす ※執筆者が撮影

そして、夕方から夜にかけてこの「バドゥニャク」をセルビア正教会に持参して、燃やす行事が待っています。この燃やす行事の伝統には、イエス・キリストの誕生と深い結び付きがあります。

キリスト教の教えによれば、イエス・キリストがベエツヘレムで誕生した時に、父ヨセフが赤ん坊イエスと母マリアの母体を暖めるために火を灯したとされています。この教えが、この「バドゥニャク」を燃やす伝統行事に反映されています。

※「バドゥニャク」を燃やす行事の様子【2018年時】

また、その夜には各セルビア正教会の修道院で、司祭によるクリスマス・イヴの奉神礼(セルビア語:Ponoćna Božićna liturgija)が執り行われるため、信仰心の強いセルビア正教徒は教会に出向いています。

※クリスマス・イヴの奉神礼の様子【2018年時】

 

クリスマス当日の過ごし方

クリスマス

セルビア正教徒のクリスマス「ボジッチ」は西方教会圏で祝われている国々と同様に、家族一同でクリスマスを祝います。

そのため、例えばセルビアの首都ベオグラードの大学に通う学生や実家が地方にある人々はクリスマスを家族と祝うために帰省します。

クリスマス当日の朝は、早く起きれば起きるほど一年間の幸運を強くもたらすという言い伝えがあるようで、信仰心の強いセルビア国民はセルビア正教会に出向き、朝早くからクリスマスの奉神礼を受けています。

※クリスマス当日の朝の奉神礼の様子【2018年度】

セルビア正教徒が祝うクリスマスで一大イベントとなるのは、クリスマス当日の昼ごはんです。セルビアでは一般的に昼ごはんは12時ではなく、14〜15時の間に食べる習慣があり、クリスマス当日も昼ごはんは14時ごろに食べます。

実は、東方正教会の一派であるセルビア正教会の教えには断食する期間(大斎 )があり、1月7日のクリスマスが訪れる40日前の日付から厳しい食の節制を行う宗教的習慣[keikou]があります。

この断食の宗教的習慣で禁止される食べ物は、以下のようになります。

平日:卵、乳製品、肉、魚、オリーブ油、アルコール類(ワイン)
土日:卵、乳製品、肉

セルビア正教会では、土日に限って魚とオリーブ油、アルコール類を摂取しても良いことになっていますが、他の東方正教会では土日でも魚を摂取してはいけないことになっているようです。

しかしながら、[keikou]クリスマスの40日前からこのように厳しい食の節制を行うセルビア正教徒はよほどの信仰心が強い信者に限っており、一般的な家族はこのような宗教的習慣を行っていません。

行うとしてもクリスマス前日のイヴの時だけ断食をするという家庭はあるようです。例えば、妻の家族はクリスマス・イヴに限って上述した断食を行っています。

そのため、クリスマス・イヴだけまたはクリスマス当日までの40日間も断食していたセルビア正教徒は大好きな肉や乳製品をようやく食べれるということもあり、クリスマス当日の昼ごはんをたくさん食べます。

セルビアでは、基本的に夕食ではなく昼食がメインであるために、昼食にがっつり食べる習慣があることからも、本当にたくさん食べます。

妻の実家でクリスマス当日に食べた昼食

妻の実家でクリスマス当日に食べた昼食 ※執筆者が撮影

このクリスマス当日の昼ごはんには、ほとんどの家族で行われる伝統的なイベントがあります。

Božićna česnicaと呼ばれるクリスマス用自家製パン

Božićna česnicaと呼ばれるクリスマス用自家製パン ※執筆者が撮影

妻の家庭では、祖母が毎年のクリスマスに合わせて上記の写真のような大きなパンを作ります。このパンはクリスマス用自家製パンと呼ばれており、多くのセルビア人家庭では同じ形状やデザインではなくとも、上記のような写真のパンを作ります。

例えば、義理の祖母が作った上記の写真のパン表面には中心に十字架、その脇には愛や信仰などに関係する形状がデザインされています。

実はこのパンの中には、一枚の金貨が入れられています。そして、家族の一員で一斉にこのパンを引きちぎり、自身が引きちぎった中にこの金貨があれば、その人は次の一年間を通じて幸運が訪れるとされています。妻の家族では毎年のように義理の父がこの金貨をゲットしているみたいです。

セルビア正教会の総本山である聖サヴァ大聖堂の前では、毎年大きなパンが準備されて市民にかけらが配られる

セルビア正教会の総本山である聖サヴァ大聖堂の前では、毎年大きなパンが準備されて市民にかけらが配られる出典:Blic

家庭で作られるパンだけでなく、セルビア正教会の総本山である聖サヴァ大聖堂の前では、毎年クリスマスの朝に重量180kgにも及ぶ大きなパンが用意されている。そして、このパンの中には複数枚の金貨が入っており、毎年毎年この金貨をゲットして幸運を手に入れようと多くのベオグラード市民が集まることが恒例行事となっています。

まとめ

セルビアのクリスマスは西方教会圏と大きく異なる

セルビアのクリスマスは西方教会圏と大きく異なる

これまで述べてきたことを総括してみよう。

✓セルビアのクリスマスは、12月25日ではなく1月7日
✓西方教会圏で祝われるクリスマスよりも、より宗教的伝統がまだ深く残っている
 ▷このことから、セルビア人はより信仰心の高い国民と言える

私がセルビアのクリスマスのお祝いを実際に体験して思うことは、日本人にとっても馴染みのある西方教会圏のクリスマスとは大きく異なることです。西方教会圏ではどれくらいの国民がクリスマスに教会を訪れるのか詳細は分かりませんが、現代社会ではそれほど高くはないでしょう。一方で、セルビアでは依然として多くの国民がクリスマスに正教会を訪れています。

補足事項として、これまで述べてきたセルビア正教会のクリスマスを祝う際の習慣や伝統文化は、他の東方正教会で行われていないこともあります。正教会の歴史を知る上で、以下のギリシャ正教に関する書籍は非常に参考になります。

以上、セルビアで祝われるクリスマスはどんなものなのかを知る一つの機会になれば嬉しく思います。

 

オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト。オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。


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大学時代に旧ユーゴスラヴィア史を研究し、1年間セルビアに留学。旧ユーゴ史研究者に少し憧れたものの諦める。現在は、オランダ・セルビアに特化した記事を書くフリージャーナリストとして活動。

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