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【オランダ総選挙2017特集】意外と複雑なオランダの選挙制度を徹底解説!

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オランダの選挙制度

15日にオランダ下院議会議員選挙が控えているということもあり、今回は意外と複雑なオランダの選挙制度について紹介したいと思います。オランダは日本と選挙制度は大きく異なる方法を採用しており、多くの日本人には馴染みがないかもしれません。

 

国民により選出された代表者が議会を通して政治を運営する議会制民主主義を採用しているオランダでは、国民に付与されている直接選挙として以下の4つの選挙があります。

  1. 下院議会議員選挙
  2. 州議会議員選挙
  3. 市議会議員選挙
  4. 欧州議会代表選挙

これらのつの直接選挙のうち、オランダ王国全体の代表として国政に携わる代表を選出する選挙は、下院議会議員選挙となります。そして、下院議会議員選挙は年の任期を終えた議員が総辞職をし、新たな代表者を選出する総選挙となります。そのため、基本的には年に度行われる直接選挙であり、日本の衆議院議員総選挙に値するものになります(内閣が自己の判断または議会の不信任案決議によって総辞職する場合は早まります)。

※州議会議員選挙と市議会議員選挙は年に度、欧州議会代表選挙は年に度行われています。

※上述したつの直接選挙以外に、オランダには間接選挙がつあります。これは上院(第一院)議会議員選挙になります。詳細に関しては、以下のオランダの政治制度を参照してください。

 

以下に紹介していく内容は、この下院議会議員選挙を中心にして記載していきます。

 

オランダの選挙権

オランダの選挙権が付与される有権者は、以下のオランダ国籍保有者、EU加盟国出身外国人、非EU加盟国出身外国人と主につに分類されます。

①オランダ国籍保有者

有権者の要件:18歳以上のオランダ国籍保有者

選挙権が付与された選挙:下院議会議員選挙、州議会議員選挙、市議会議員選挙、欧州議会代表選挙

※オランダ本国外に居住するオランダ国籍保有者には、大使館にて在外選挙登録すれば下院議会議員選挙と欧州議会代表選挙のみへの選挙権が認められています。

 

②EU加盟国出身外国人(例:ドイツやフランス)

有権者の要件:EU(ヨーロッパ連合)加盟国出身であり、居住する市庁舎にて住民登録を完了している18歳以上の者(=非オランダ国籍保有者)

選挙権が付与された選挙:市議会議員選挙、欧州議会代表選挙

 

③非EU加盟国出身外国人(例:日本やアメリカ合衆国)

有権者の要件:非EU加盟国出身であるものの、合法的にオランダで最低5年間居住する18歳以上の者

選挙権が付与された選挙:市議会議員選挙

 

オランダ在住でオランダ国籍を保有していない日本人の方が該当する選挙権は、番目の「非EU加盟国出身外国人」に付与されている「市議会議員選挙」権になります。ただし、EU加盟国出身外国人とは異なり「最低年以上のオランダ国内居住」が要件としてあります。ということは、オランダでは日本と異なり、外国人にも地方参政権は認められているということになりますね。

 

オランダの選挙のやり方

制度

下院議会議員選挙は、他のつの直接選挙と同様に政党名簿比例代表制を採用しています。政党名簿比例代表制とは、選挙に立候補する各政党が擁立する候補者の名簿を作成し、議席は党が得た票数(得票数)に比例して各党に配分される制度です。そして、この政党名簿の候補者が選ばれる順番は、党内であらかじめ決定されているため、名簿に記載されている上位から選出されていく形になります。

居住地に届けられたデカい下院議会選挙の候補者一覧表

居住地に届けられたデカい下院議会選挙の候補者一覧表

オランダの下院議会は全部で150議席あります。簡単な例を挙げるならば、得票率10%を獲得した政党A150議席×10%10議席、得票率20%を獲得した政党B150議席×20%30議席が配分されるような形になります。つまり、得票率=議席数になります。

この政党名簿比例代表制のメリットは、以下のように挙げられます。

  1. 複数の候補者から1人または2人の代表者を選出する選挙区制と比べて、死票(落選した候補者に投じられる票)が少なくなる
  2. 人気のない政党の候補者でも、全体の得票数に応じて議席が配分されるために議席を獲得する可能性がある
  3. 少数の国民の意見も議会へと反映される

 

政党の選挙立候補制度

下院議会で既に議席を獲得した候補者を擁立している政党(2012年時の選挙結果では11政党)は、定められた期日前に届け出を出せば選挙に立候補することが出来ます。

しかしながら、下院議会で議席を保持していない政党(以下、新たな政党)が選挙に立候補する場合は、つの条件があります。

①高額の保証金を払う必要性

人々の気まぐれで選挙に立候補する可能性を防ぐため、新たな政党が選挙に立候補する際には11,250€の保証金をデポジットとして支払う必要があります。この保証金は、選挙で一定の条件(選挙戦で全体の得票率のうち0.5%を獲得)を達成すれば返金されます。

②各選挙区から政党支持者30名の署名が必要

オランダには計20の選挙区(オランダ王国を構成するカリブ諸国3つの選挙区含む)があり、各選挙区から政党を支持する30名、つまり20選挙区×30名=600名の署名が必要になります。

315日に予定されている今回の下院議会選挙には、計81政党が立候補する意思を表明していました。しかしながら、上記の2つの条件を通過した新たな政党を含めて、最終的に選挙に立候補することを認可されたのは28政党でした(こちら参照)。そのため、オランダで政党が選挙に立候補することは容易ではないことが分かります。

 

投票のやり方

オランダの投票方法

オランダの投票方法

日本国出身の方にとっては当たり前のことかもしれませんが、オランダでも投票することは法律上義務ではありません(任意投票制)。そのため、投票券が送付されてきても投票所に赴き、投票しなくても義務ではないので罰金などが科せられることはありません。

オランダでは、投票券は投票日の週間前に有権者の下に送付されます。投票日当日は、この投票券と身分証明書を投票所に持参しなければなりません。ちなみに投票所が指定されている日本とは異なり、オランダでは投票所は指定されておらず自身が居住する地方自治体内の投票所であれば、どこでも投票することが可能です

オランダも日本同様に投票所は、学校などの公共施設が使用されています。また、オランダの選挙は主に平日である水曜日に実施されていますが(今回の下院議会選挙も同様)、投票所は基本的に7:30から21:00まで開いているので、当日仕事があっても勤務前後に投票することが可能です。

投票用紙のイメージ図

投票用紙のイメージ図 出典:DutchNews

 

投票所の受付で投票券と身分証明書を提示すると、上図のような投票用紙が配布されます。この投票用紙は、立候補した政党が擁立する候補者がずらっと並んでいます。投票の方法は簡単で、支持する政党が擁立する候補者一覧から投票したい候補者名の左枠に配布された赤色鉛筆で枠を埋めるだけです。

支持する政党のどの候補者に投票しようがすべての投票が政党への得票となるために、「どの候補者に投票しようと一緒でしょ。じゃあ、名簿の一番上に記載されている候補者(主に党首)に投票しよう」と思いますよね。でも、実は名簿の下位に記載されている候補者に投票するメリットはあります。

政党名簿の下位に記載されている候補者に投じられる票を「優先投票voorkeurstem」と呼ばれており、彼らの優先投票数次第では政党名簿の順番に限らず、当選することが可能になります。多くの有権者は政党名簿の一番上に記載されている候補者に投票しているようですが、優先投票を受けている候補者の中には、ある地域で有名な人物であったり、他の候補者とは異なる政治的視野を持っていたり、異なる民族的背景を持っている候補者であったりする場合が多いようです。

※「優先投票」を投じられた政党名簿の下位に記載されている候補者は、「1議席当たりの必要得票数」の25%以上の得票数を獲得する条件を達成すれば、政党名簿の順番に限らず、議席を獲得することが出来ます。これらの技術的な言葉や仕組みは以下で説明します。

投票用紙の入れ方

あとは、上図のように指定の回収箱に投票用紙を入れるだけですね。

 

議席の配分方法

オランダの選挙制度は政党名簿比例代表制であり、政党の得票率=議席数と前述しましたが、ここでは投票数の配分方法をより詳しく説明します。

すべての投票所で有効投票数が数えられた後、まず議席当たりの必要得票数を換算します。

(例1)

  • 有効投票数:900万票
  • 下院議会議席数:150
  • 900万票÷150議席=万票(議席当たりの必要得票数)

上記の(例1)で示すように、すべての有効投票数が900万票だった場合、政党が議席を獲得するために必要となる得票数が万票となります。ということは、国民の投票率が高く有効投票数も多ければ多いほど、1議席当たりの必要得票数は増加します。

その後、この必要得票数を使って各党の得票数から割り当てられる議席数を換算します。

(例2)

  • 議席当たりの必要得票数:万票
  • A党の得票数:38万票→獲得議席数:議席(余り万票)
  • B党の得票数:235.5万票→獲得議席数:39議席(余り1.5万票)
  • C党の得票数:92万票→獲得議席数:15議席(余り万票)

(例2)を見てお分かりの通り、このような方法で議席を配分すると必要得票数(この例では万票)に届かずに余ってしまう票(余り票)が出てきます。

この票が死票になるかというとそうではないのです。おそらく、(例2)のようにどの政党も絶対に余り票が出てくるために、全150議席のうち分配できずに余る議席が出てきます。この余った議席をどうやって分配するのでしょうか。

それは、得票数に獲得した議席数に+1議席した数字で割った「議席当たり平均得票数」が高い政党順に余った議席が分配されていきます。言葉で説明すると非常に分かりにくいので、例として「余った議席が議席であり、この議席を例2で示した3つの政党で分配する」という状況の下で説明します。

(例3)

  • A党の得票数:38万票÷(6議席+1)=5,4286
  • B党の得票数:235.5万票÷39議席+1)=5,8875
  • C党の得票数:92万票÷15議席+1)=5,7500

 

上記の(例3)で示す結果によれば、「1議席当たり平均得票数」が多い政党は、B党>C党>A党という順番になります。そのため議席はB党とC党へと配分されます。この数値は総得票数が多ければ多いほど高くなるので、得票数の多い=大きな政党に有利な分配方法となっています。

この分配方法を使って、余った議席を「1議席当たり平均得票数」が多い政党順に最後まで分配していきます。

※上記で余った議席の分配方法は19議席以下の市議会議員選挙では使用されません。その場合は余った得票数の多い順で余った議席を分配します。

 

まとめ

これまで説明してきたように、オランダは政党名簿比例代表を選挙制度として採用しているために、下院議会はどの政党も議会の全議席数の過半数を保持することはなく、2017年2月時の下院議会は11政党の議員によって構成されています。

この選挙制度は、選挙後に内閣を組織することにも大きな影響を与えており、1政党だけで議会過半数を超える議席数を獲得し、内閣を組織することが出来ない仕組みになっています。そのため、連立政権を作って議会過半数を超える議席数を獲得する必要性があり、この過程の交渉や会合が選挙戦に勝つことよりも重要だと言われています。

※内閣の組織の流れは、以下の記事にて詳細に説明しています。

 

※オランダ総選挙2017で注目を浴びた極右政党オランダ自由党首ヘルト・ウィルダースの反イスラム思想を持つようになった背景を以下の記事で探りました。

 

以上、オランダの選挙制度を徹底解説してみました。選挙権を付与されていない方も、これまでに述べたオランダの選挙制度を知った上で15日に予定されている下院議会選挙に注目してみてみませんか。

 

参考資料
Politics in the Netherlands, ProDemos, Den Haag, 2013.

オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト&社会派ブロガー。オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。


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大学時代に旧ユーゴスラヴィア史を研究し、1年間セルビアに留学。旧ユーゴ史研究者に少し憧れたものの諦める。現在は、オランダ・セルビアに特化した記事を書くフリージャーナリスト兼社会派ブロガーとして活動。

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