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【ユダヤ人犠牲者率90%以上】ベオグラードのユダヤ人墓地からホロコーストの歴史に触れる

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セルビアで行われたホロコースト

強制収容所に連行されるユダヤ人(セルビア北部ズレニャニン)

強制収容所に連行されるユダヤ人(セルビア北部ズレニャニン) 出典:https://www.open.ac.uk/

第二次世界大戦中のナチス・ドイツ軍によるユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)が行われた国として、ポーランドやチェコスロヴァキアは多くの人が思い浮かぶはずです。また、ホロコーストの犠牲者であるアンネ・フランクが書き留めた日記の影響で、私が現在居住するオランダも思い浮かぶ人がいると思います。

その一方で、ナチス・ドイツ軍に侵略されてユダヤ人が大量虐殺されたセルビア(または、旧ユーゴスラヴィア地域)の歴史を知らない人が多いのではないでしょうか?

ホロコーストによるユダヤ人犠牲者数を見れば、セルビア国内のユダヤ人犠牲者数は全体的に多いわけではありません。しかしながら、戦前の人口と比較した犠牲者率はホロコーストが行われた国々の中でも、非常に高い数値となっています(約90%)

 

ホロコーストの犠牲となったベオグラード市内のユダヤ人家族を追悼する石板プレート

ホロコーストの犠牲となったベオグラード市内のユダヤ人家族を追悼する石板プレート

そもそも第二次世界大戦が始まる前のセルビアには、約4万人強のユダヤ人人口があったとされています(ベオグラード市内:約12,000人、セルビア北部:約3万人強)。

1941年にナチス・ドイツ軍に侵攻されてナチス軍の支配下となったセルビアでは、国内のユダヤ人に対する虐殺がすぐに開始されます。そして、約1年間の間にセルビア全土のユダヤ人のほとんどが虐殺されました

ナチス・ドイツ外務省高官でセルビアのユダヤ人虐殺を担当していたフランツ・ラーデマッハーは1942年3月(ナチス・ドイツ軍の侵略から約1年後)に、以下のように誇らしげに宣言をしています。

 

「ユダヤ人問題は、セルビアでもはや存在しない。残された課題は彼らの財産問題をどのように処理するかだけだ。」

 

また、ナチス・ドイツ親衛隊大佐のエマヌエル・シェーファーは同年夏に以下のように述べています。

 

「ベオグラードは、ヨーロッパ主要都市で唯一ユダヤ人が浄化された街だ。」

 

そして、ナチス・ドイツ親衛隊ハラルト・トゥルナーは1942年8月に、「セルビア国内でのユダヤ人問題は解決された」とベルリンに公式通達しています

 

ナチス・ドイツ軍によるセルビア国内の「ユダヤ人問題解決または浄化」の発言から、セルビアはナチス・ドイツ軍に占領されたヨーロッパ諸国の中で、エストニアに次いで2番目に「ユダヤ人浄化」が正式に宣言された国であると同時に、ソビエト連邦外の国家でユダヤ人に対する組織的な大量虐殺が目撃された最初の国であることが分かります。

 

前述したように、第二次世界大戦が始まる前のベオグラードには約12,000人のユダヤ人が住んでいましたが、1944年にセルビア全土がナチス・ドイツ軍支配から解放された時には、たったの1,115人のユダヤ人しか生き残っていなかったとされています。つまり、ベオグラードに居住していた約90%以上のユダヤ人は虐殺されたということになります。

旧ユーゴスラヴィア地域全体には目を向けてみるならば、1941年時に約82,500人のユダヤ人が住んでいたとされていますが、1944年にナチス・ドイツ軍支配から解放された時に生き残っていたユダヤ人は約14,000人(ホロコーストが行われる前との人口比:17%)となります。

 

まとめ-戦後セルビア社会のユダヤ人共同体

非常に古く、立派な墓石

非常に古く、立派な墓石

第二次世界大戦後に生き残ったユダヤ人の多くはイスラエルに移住したとされており、1948年に行われた人口統計によれば旧ユーゴスラヴィア地域全体に居住していたユダヤ人は6,853人、1953年には1,504人と減少していきました。

現在(2011年時)のセルビア共和国内には、787人のユダヤ人が居住しているとされています(自己申告制のため正確な人口数ではない)。

その影響もあり、このユダヤ人墓地に埋葬されている家族の多くはセルビア国内ではなくイスラエルを中心に諸外国に居住していることが予想されるため、手入れがあまりされていない墓石だったり、経年劣化が進んでいる墓石が見受けられます。

もちろん、このユダヤ人墓地内には日頃手入れをする係員がいると思いますが、入口の門からだけでなく中に入って周りを見渡しても荒廃した墓地という印象を受けてしまいます。

このユダヤ人墓地内には、セルビアで唯一機能しているシナゴーグがあり、ベオグラード市内に居住するユダヤ人共同体の拠り所となっています。

 

もしベオグラードを訪れることがあったら、是非このユダヤ人墓地を訪れて第二次世界大戦中のセルビアで起きたホロコーストの歴史に触れてみてはいかがですか?

 

このユダヤ人墓地の場所は、ベオグラード中心地から少し離れた場所に位置しています。徒歩で行くならば約30分強はかかるので、バスなどの公共交通機関を利用して訪れることをオススメします。正確な場所は、ベオグラードに現存する最も古い墓地「Novo Groblje 新墓地」の向かい側になります。

Novo Groblje 新墓地」の地図

 


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フリージャーナリスト&英語・セルビア語通訳者
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オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト

オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。

お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。

大学時代に旧ユーゴスラヴィア史を研究し、1年間セルビアに留学。旧ユーゴ史研究者に少し憧れたものの諦める。現在は、オランダ・セルビアに特化した記事を書くフリージャーナリストとして活動。

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