KOTARO JOURNAL

第2の故郷セルビアに里帰りして気が付いた社会的・経済的変化(2016/17年)

セルビア クネズ・ミハイロバ通り

久しぶりの投稿になります。前回の投稿から約ヶ月もの間が空いてしまっていましたが、今日からまた定期的に記事を書いていけたらと思います。

昨年12月に妻の親族に不幸があり、1229日から12日までの約週間、妻の母国であり、私にとっても第の故郷でもあるセルビア共和国(以下、セルビア)に里帰りしていました。

ベオグラード大学哲学部校舎

留学していた2011/2012年に通っていたベオグラード大学哲学部校舎

 

前回セルビアを訪れたのは2014年の夏だったため、約年ぶりの訪問となりました。約年という月日は私にとってあっという間に過ぎ去った印象があり、「久しぶりにセルビアに帰る」という感覚は全くしませんでした。

ベオグラード大学言語学部校舎

私がセルビア語を勉強していたベオグラード大学言語学部校舎

 

しかしながら、今回セルビアに帰って妻と街中を歩いていると、「あぁ~家に帰って来たな」という感覚が急に現れて、少し泣きそうになってしまいました。そのため、妻がセルビア人という事実は関係なく、「セルビア」が私の「第2の故郷」になりつつあるなという印象を抱いた里帰りでした。

 

今回は「オランダ」とは全く関係がないものの、約年ぶりにセルビアに里帰りして気付いたセルビア国内の社会的・経済的変化について書きたいと思います。

 

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セルビア国内に現れる「ロシア愛国」化

ベオグラード中心部のお土産屋で売られているプーチン大統領のTシャツ

ベオグラード中心部のお土産屋で売られているプーチン大統領のTシャツ

私がセルビアに訪問した年前とは異なる雰囲気を街で感じました。

上図の写真を見て貰えれば分かりますが、街中のお土産屋さんにプーチン露大統領をモチーフにしたTシャツがたくさん売られているのです。それだけではなく、街中にはロシアの伝統的なお土産屋展示会が開かれていたり、ロシアからの輸入オーガニックコスメ店などロシア関連のお店が増えていました。

こうした様子は、私が留学していた2011年時や約3年前に訪れた時にはほとんど見られなかったので、非常に驚きました。

ロシア伝統品のお土産展示会の様子

ロシア伝統品のお土産展示会の様子

 

セルビアとロシアの関係は、歴史的に昔から非常に強い絆があります。この関係を一言で表現するならば、「ロシア=親、セルビア=子」と言えばしっくりくると思います。

近年は東欧の多くの国が欧米側の影響下に入るようになり、バルカン半島ではセルビアのみがロシア寄りの立場を現在も取っている印象を受けます。

そのため、地理的に重要な地域であるバルカン半島で、「唯一の我が子を失いたくない!」という気持ちが親であるロシアで高まり、ロシアとセルビアの関係が急速に強まってきた影響が街中にも現れてきているのかなと思われます。

歴代露大統領のマトリョーシカ

歴代露大統領のマトリョーシカ

私は親ロシア派でもプーチン信者でもありませんが、セルビア語と同じスラヴ語族であるロシア語には親近感があり、また大学ではロシア語やロシア史を少しばかり勉強していたこともあるため、文化的・歴史的側面のロシアには興味があります。

そのため、今まで欲しかった歴代露大統領版マトリョーシカを「セルビアで」お土産に購入することができ大満足です!(笑)

※上図左からプーチン、エリツィン、ゴルバチョフ、スターリン、レーニン計

 

セルビア社会の更なる貧困化

ベオグラードで最大のショッピングセンター「ウスチェ」

ベオグラードで最大のショッピングセンター「ウスチェ」

最新の統計情報(2016年9月期)によれば、セルビア全体の月当たりの平均給与は369.7€(約45,000円)になります(こちら参照)。しかしながら、妻の家族や友人の話を聞く限りでは、この数字は現実的ではないそうで、実際は300€(約35,000円くらいだろうとのこと

「東欧は物価が安いし、それくらいの給与でも十分暮らせるはずだ」と多くの日本人の方は思うかもしれないが、実際この給与でアパートを借り、光熱費を払い、生活することははっきり言って不可能に近いと思います。

 

約3年ぶりにセルビアに帰って来て一番驚くのが、全体的な物価の上昇です。平均給与は私が留学していた頃よりも全く変わっていないにもかかわらず、食料品や日用品の物価が非常に高いと感じてしまいます。

私は今オランダに住んでいますが、下手したらオランダの方が安く買える物が圧倒的に多いと感じてしまいました(先進国であり、平均給与が圧倒的に高いオランダにもかかわらず)。

上図は首都ベオグラードで最大のショッピングセンター「ウスチェ」!友人と映画を観に行った帰りに寄ったフードコーナーで驚くべき光景を目の当たりにしました。

ショッピングセンター「ウスチェ」の中

ショッピングセンター「ウスチェ」の中

新年を迎えたこともあり、多くの人々で賑わうフードコーナーであるが、外見上汚れた服を着た人(差別的な意図はありません)何人かがテーブル上に残った食べ物や飲料水を無心に食している光景を目にしました。この後も数回訪れたが、こうした光景を毎回見ました。

セルビアにはロマ人(ジプシー)が生活しており、彼らが路上で人々に物乞いをする光景は以前から当たり前のように見られていましたが、フードコーナーで残飯物を食していたのはロマ人だけではありませんでした。

その光景が私にとって非常にショックでした。

 

日本社会には「1億総中流」という言葉がかつて存在するほど、多くの日本人は自身を中流階級と分類する意識は強いと思います。反対に、セルビアでは中流階級は存在せず、社会全体の95%が貧困層、残りの5%が富裕層という言い方がなされます。

この言い方が「言葉」ではなく、実際に「現象」として起きていることを目の当たりにしたような気がしました。

最後に友人から聞いた話ですが、セルビア人の若者が1日当たり平均で約人がセルビア国外に出て行っているとのこと。理由は、特別な技能を持っていてもセルビア国内に良い職が見つからず、将来的な安定した生活を見出せないからです。

私の友人の多くも、国外に移住を考えています。今年は数人の友人がドイツ、カナダ、アメリカに飛び立つ。優秀な若者がどんどん流出してしまっている現状がセルビアの将来を暗示しています。

 

NATOによるセルビア空爆跡地の変化

NATO空爆跡地の建物

NATO空爆跡地の建物

ベオグラード中心部には、1999月末から月中旬にかけて約ヶ月半に渡り米軍を中心としたNATO軍によるセルビア空爆を受けた跡地が残っています。このセルビア空爆前において、上図には軍関連の施設があり、下図には警察関連の施設がありました。

前者の空爆跡地の道路挟んで反対側にある建物

前者の空爆跡地の道路挟んで反対側にある建物

私が留学していた2011/12年時はセルビア空爆から10年以上経過しているものの、空爆跡地は解体されずに残っていました。その理由は、①高額な解体費用がかかる点、②NATOによる空爆の悲惨さをセルビア国外に印象づけるため、が挙げられます。

これらの「遺産」に昨年2016年の年明けから変化が起きて始めました。

セルビア防衛省によれば、今後順次解体作業を始め将来的には軍関連の施設が新たに作り直させる予定だそうです。上図枚目の建物も実は少しばかり解体作業が行われた形跡があります。

しかしながら、セルビアの場合こうした作業は非常にノロノロと行われるために、いつになったらすべて解体されるのかは実際のところ不透明なので、しばらくはそのまま残っていそうな気がします。

 

セルビア国内の米国次期大統領トランプ人気

記事冒頭の「セルビアのロシア愛国化」でプーチン露大統領をモチーフにしたTシャツがお土産屋さんで売られていることを紹介しましたが、実はトランプ米国次期大統領をモチーフにしたTシャツも同時に売られてました!(残念ながら写真を撮るのを忘れていました)

実は昨年2016年に行われていた米国次期大統領選挙において、過激な発言で注目を集め、世界中から批判の嵐にあっていたトランプ候補(当時)を応援していた国が世界中でヵ国あると言われています。

それらの国々は、ロシアと中国、そしてセルビアです。

 

英国の調査会社Ipsos MORIによれば、「どちらの米国大統領候補を支持しますか」という質問に対し、セルビアでは回答者のうち42%が「トランプ候補を支持する」と回答していたのです(敵対するクリントン候補支持は、29%のみ)。

これほど高い支持率は珍しく、如何にセルビアでトランプ候補が人気だったのかお分かりになると思います(こちら参照)。

 

この人気の理由を探るため、大学で政治学を勉強していた友人にその理由を聞いてみました。彼によれば、つの理由が挙げられるとのこと。

 

トランプ候補の敵対候補が、ビル・クリントンの妻ヒラリー・クリントンだったため

ヒラリー・クリントン候補の夫は、ビル・クリントン元米国大統領であることは周知の事実だと思いますが、ビル・クリントンとセルビアの関係は?と聞かれると分からない方もいるかもしれません。

実は、ビル・クリントンが米国大統領として任務していた時(1993~2001年)は、ちょうど旧ユーゴスラヴィア紛争が勃発していた最中であり、ビル・クリントンはバルカン和平のために積極的に介入しました。

とりわけ、1990年代後半のセルビア南部にあるコソヴォ自治区(当時はセルビア人とアルバニア人の混住地域)で旧ユーゴ連邦から独立しようとするアルバニア人とそれを阻止しようとするセルビア人側との衝突が激しくなり、コソヴォ紛争が勃発しました。

当時のビル・クリントン政権は、このコソヴォ紛争においてアルバニア人側を支援し、最終的にはNATOによるセルビア空爆、コソヴォ自治区の国連主導の平和維持軍の常駐、そして2008年のコソヴォ独立とセルビア人側にとっては苦い記憶があります。

そうした影響もあり、ビル・クリントンの妻であるヒラリー・クリントン候補を信用する人は多くなく、敵対候補であるトランプ候補の支持へと向かったのではないか、とのことです。

 

1999年のNATOによるセルビア空爆の決断を当時批判していたため

コソヴォ紛争末期の1999年3月~6月にかけて、米国空軍を中心としたNATOによるセルビア空爆に関して、トランプ候補は当時この決断を批判していました。同年10月8日の米国放送番組にて、このNATOによるセルビア空爆の決断に「賛同しない」、「私だったら違うやり方をしただろう」と述べていました(以下の動画を参照)。

 

「1999年のNATOによるセルビア空爆は大きな間違いだった」とインタビューで述べたため

2016年の次期米国大統領選挙期間中にセルビア国内雑誌Nedeljnikのインタビューを受けたトランプ候補(当時)は、以下のように述べました。

「2度の世界大戦で我々の同盟国だったセルビア人に対して空爆を行ったことは大きな間違いだった。セルビア人はとても素晴らしい人々だ。残念ながら、クリントン陣営(当時のビル・クリントン陣営)はセルビア人だけでなくバルカン半島全体にに多くの悲しみをもたらし、大混乱を引き起こした」(こちらより引用)

 

以上、つの理由からトランプ人気がセルビア国内で起きているとのことです。まだトランプ次期米国大統領はバルカン地域の政策に関して詳細なことを話していませんが、今後どのような政策を取るのか楽しみな部分もあります。

 

スイス製の新型列車が到来!

セルビアの新型列車

セルビアの新型列車

セルビアにはかつてより鉄道路線がセルビア全体に広がっており、セルビアの各都市を結んでいます。しかしながら、走っていた列車は非常に古く、歩いた方が速いんじゃないかと思わせるほど、ノロノロと走っていました

また、途中でどこかの部品が故障して足止めに遭うことも多々あり、私は国内旅行の場合はバスでの移動を優先して使っていました。

しかしながら、2015月末よりスイス製の新型列車をセルビアが購入し、この列車が綺麗で速いとの噂を聞き、セルビア北部にあるノヴィサドに住む友人宅を訪れる機会にこの新型列車を使ってみました!

新型列車内の様子

新型列車内の様子(イメージ図) 出典:Vecernje Novosti

 

このスイス製新型列車は、時速最大160kmまで走行可とのことですが、セルビア国内の線路状況はあまり良くなく、安全面を考慮して最大120kmまで出しているそうです(こちら参照)。

ベオグラードへ帰路中の速度、時速120km

ベオグラードへ帰路中の速度:時速120km

乗ってみた感想は、非常に快適であっという間にノヴィサドに着いた印象を受けました。なので、これからセルビアへ観光旅行に行き、国内を移動しようと考えている方は列車での移動をオススメします!

近年はバスのチケットが非常に高く、一方で列車のチケットは圧倒的に安いです!

 

セルビアの都市再開発 Belgrade Waterfront

Belgrade Waterfrontの未来完成図

Belgrade Waterfrontの未来完成図

2014年よりセルビア政府と中東アラブ首長国連邦のアブダビに拠点を置く投資開発会社Eagle Hillsが共同出資者として、ベオグラードの都市再開発事業が立案されました。それが、上図のBelgrade Waterfront(公式サイトはこちら)になります。

 

上図は未来完成図であり、現在の様子は下図になります。

Belgrade Waterfront計画の一部

Belgrade Waterfront計画の一部

 

この建物は20階建ての高層マンションに当たり、201510月より建築が始まったようです。完成予定は2018年初頭のようですが、あと残り年しかないため期限通りに完成するのは無理なのではと思ってしまいます。

事業計画としては、この高層マンション以外に五つ星ホテルや30㎡もの広大なショッピングモール、168mの高さを持つ高層タワー、他多数施設等の大規模な都市再開発事業になります。そのため、未来完成図になるまでには現実的に20年近くか計画倒れしてしまうのではと思ってしまいます。

 

ちなみにこの都市再開発事業に関して、ベオグラード市民の多くは反対の意を唱えています。

なぜならば、多くの市民が生活苦に悩んでいるにもかかわらず、政府が大切な予算を中流・上流階級のための施設を建築し、国内の経済格差を更に露呈してしまうことや、この再開発事業が行われる場所にあったカフェやレストランなどが「強制的に」撤退させられてしまった等の背景があります。

そうした反対の意を唱えるべく、これまでに何度も大規模なデモが行われてきましたが、セルビア政府の意向は変わらないようです。

セルビア人のこうした圧政に屈しない闘争心を私は非常に高く評価しています。こうした闘争心は、これまでのセルビアの歴史が培ってきた物であると思っています。

 

以上、今回私が第の故郷セルビアに里帰りして気が付いた変化になります。このブログは主に私のオランダ生活に関する記事を書くために始めたものですが、私にとって「セルビア」は人生から切り離せないものでもあるため、時々セルビアに関する記事も書いていこうかなと思います。

 

オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト。オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。


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大学時代に旧ユーゴスラヴィア史を研究し、1年間セルビアに留学。旧ユーゴ史研究者に少し憧れたものの諦める。現在は、オランダ・セルビアに特化した記事を書くフリージャーナリストとして活動。

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