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“どこにでも行けた”ユーゴスラヴィア時代の”最強”パスポート大公開!

"どこにでも行けた"ユーゴスラヴィア時代の”最強”パスポート大公開!

セルビアなどの旧ユーゴスラヴィア諸国を訪れて、中高年以上の人々と交わると、よくユーゴスラヴィア社会主義時代(以下、ユーゴ時代)の昔話をされます。

「ユーゴスラヴィアが崩壊する前は本当に良い時代だった……仕事もあったし、お金もあったし、夏季休暇で毎年海にも行けた……」

こうした昔話をしていると、毎回のように登場する話題があります。

 

それは、ユーゴ時代に発行されていた”赤のパスポート”の話です。

多くの旧ユーゴ国民が口を揃えて、「ユーゴスラヴィアのパスポートがあれば、世界中どこにでもビザなしで行けたんだ!」と言います。

 

私は”世界最強のパスポート”と呼ばれていたユーゴ時代のパスポートの話を色々と聞いていたものの、これまで実物を見る機会がありませんでした。

しかし、先日にセルビア人妻の実家にある倉庫を整理していると、義父がかつて使っていたユーゴ時代のパスポートが偶然にも出てきました!

今回の記事では、偶然に出てきた義父のユーゴ時代のパスポートを写真とともに大公開したいと思います!

 

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ビザなしでどこにでも行けたのはなぜ?

ユーゴスラヴィア時代のパスポート(表紙)

ユーゴスラヴィア時代のパスポート(表紙) ユーゴスラヴィアの建国日1943年9月23日が刻印されています。

第二次世界大戦以降からソ連が崩壊する1991年までのヨーロッパは、冷戦の影響で東西に分断されていた影響で、東側の人々が西側諸国にビザなしで簡単に行ける時代ではありませんでした。反対の場合も同じだったはずです。

しかしながら、当時のユーゴスラヴィア社会主義共和国連邦は社会主義国であったものの、東側陣営とは対立した後に距離を置くようになって、西側陣営にも加盟しない中立政策を貫いていました。

当時の大統領ティトー(またはチトー)が先導して、1961年にはユーゴスラヴィアの首都ベオグラード(現在もセルビアの首都)で非同盟諸国首脳会議が開かれています。

 

こうした中立政策を取っていたユーゴスラヴィアの国民たちは、1960年代以降に東西冷戦の最中でも西側・東側に関係なく自由にビザなしで行くことができました。

また、このパスポートのおかげでビザなしで行き来するだけでなく、経済的に豊かな西側諸国へ移民し、仕事を見つけることができたと言われています。

 

1976年には、人口2000万人を有していたユーゴスラヴィア地域から、国外へ出国した回数は1600万回にも及んだとされています。。この数字から、いかに多くの国民がユーゴスラヴィアのパスポートの力を最大限に使っていたかが分かります。

実際に、1960/70年代に旧ユーゴスラヴィア地域から西側諸国へと、出稼ぎ労働者(ガストアルバイター)として移民した国民数はかなりのものでした。

 

パスポートの中身を大公開!

ユーゴスラヴィア時代のパスポート(1ページ目)

ユーゴスラヴィア時代のパスポート(1ページ目)

1970年代になると、ユーゴスラヴィアの全成人のうち約半数がパスポートを所持し、観光や仕事、そしてショッピングのためにパスポートを活発に使っていました。

例えば、義父は成人となった1970年代後半から友人たちとドイツへ車で出かけて行き、ビールや食料を大量に買い込み、ユーゴスラヴィアへ帰る”旅行”をしばしばしていたとか。当時の(おそらく東)ドイツはユーゴスラヴィアも安く食料や日用品が購入できていた時代でした。

 

ユーゴスラヴィア時代のパスポート(1ページ目)

ユーゴスラヴィア時代のパスポート(1ページ目拡大)

パスポートの表紙をめくると、最初のページには4つの異なる言語で正式国名「ユーゴスラヴィア社会主義連邦共和国」と記載されています。

 

各言語は以下のようになります(上から順番に)。

  1. セルボ・クロアチア語(キリル文字)
  2. スロヴェニア語
  3. セルボ・クロアチア語(ラテン文字)
  4. フランス語(国際言語として)

 

Wikipediaの情報によれば、当時のユーゴスラヴィアでは発行される共和国によってパスポート内の表記言語は異なっていたとのことです。

例として、マケドニア共和国ではマケドニア語と英語、スロヴェニア共和国ではスロヴェニア語と英語、コソヴォ自治州ではセルビア語とアルバニア語、英語など(義父のパスポートは、セルビア共和国での発行)。

 

ユーゴスラヴィア時代のパスポート(個人情報表記ページ)

ユーゴスラヴィア時代のパスポート(個人情報表記ページ)

2ページ目は、個人情報の記載ページになります。ここは義父の個人情報となるので、モザイク処理が多々入れさせてもらっています。

左ページには生年月日や出生地、住所、右ページには証明写真と署名が書かれています。

 

パスポートの最終ページ

パスポートの最終ページ

最後のページには、注意事項などが記載されています。

記載されている内容は、ビザが必要な国に入国する際にはビザの申請をすること、自身のパスポートを他人に引き渡すことが禁止されていること、国外滞在中にパスポートを紛失した場合には近くの領事館に申請することなど、現在の日本のパスポートと変わらないものとなっています。

 

気になる方は、以下の拡大写真を参照してください。

パスポートの最終ページ

パスポートの最終ページ(拡大/前半部分)

パスポートの最終ページ

パスポートの最終ページ(拡大/後半部分)

 

旧ユーゴのパスポートがあれば、本当にどこでもビザなしで行けたの?

多くの旧ユーゴ諸国の人々は”ビザなしでどこにでも行けた”と言いますが、すべての国々”どこにでも”ビザなしで行けたわけではありませんでした。

 

ビザなしで行けることができなかった国々は、アメリカ合衆国、ソヴィエト連邦、イスラエル、中国、ギリシャ、アルバニアとなります。

アメリカとソ連、中国はそれぞれ東西陣営の中核をなす国々だったため、ビザなしで入国することができませんでした。

ギリシャはユーゴスラヴィアを構成していたマケドニア共和国との国名問題が存在していたため、アルバニアは当時のホッジャ書記長がユーゴスラヴィアとの国交断絶を行っていたためです。

イスラエルは1967年の第三次中東戦争後に、ユーゴスラヴィア側がイスラエルの国家承認を撤回したためです。

 

ということで、ビザなしで行けた国々はそれぞれの時代によって変化し、必ずしも”どこでもビザなしで行けた”というわけではなかったわけです。

ただし、当時の東西冷戦時代には”最強のパスポート”の一つであったことは間違いなく、それを証明するかのようにユーゴスラヴィアのパスポートは闇市場で約5000米ドルの値段で売買されていたとか。

 

ちなみに2018年時点の旧ユーゴスラヴィア諸国のビザなし入国できる国数は、以下のようになっています(こちら参考)。

  1. スロヴェニア:180ヶ国
  2. クロアチア:179ヶ国
  3. セルビア:130ヶ国
  4. マケドニア:125ヶ国
  5. モンテネグロ:123ヶ国
  6. ボスニア・ヘルツェゴヴィナ:118ヶ国
  7. コソヴォ:44ヶ国

 

参考資料:Koliko je nekada vrijedio jugoslovenski pasoš?, Magazin Monet.

 

オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト。オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。


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大学時代に旧ユーゴスラヴィア史を研究し、1年間セルビアに留学。旧ユーゴ史研究者に少し憧れたものの諦める。現在は、オランダ・セルビアに特化した記事を書くフリージャーナリストとして活動。

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