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オランダのタバコ事情-実はタバコ対策の後進国?-

オランダのタバコ事情-実はタバコ対策の後進国?-

現在日本では、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、他人のタバコの煙を吸い込む受動喫煙防止対策を強化する健康増進法改正案が活発に議論されています。

議論の焦点となっている点として、居酒屋やレストランなどの飲食店において完全屋内禁煙とするのか、屋内に喫煙専用室を設置して部分的屋内禁煙とするのか、またはファミリーレストラン等で見かけられる室内分煙を規則化するのか、の3つの案に分かれています。

喫煙者でもある筆者としては、「全飲食店における完全屋内禁煙」案に賛成しています。非喫煙者にもたらす害は大きな問題であると思いますし、タバコを吸いたくなった喫煙者は外に出て喫煙すれば解決する問題ですしね。

 

こうした議論が今さら活発になっている「喫煙対策後進国」の日本に対して、受動喫煙防止策を推進すると同時に、喫煙者の割合を減らそうと努力している「喫煙対策先進国」とされている西ヨーロッパ諸国。

日本人の中には、西ヨーロッパ諸国を「喫煙者に厳しく」「非喫煙者にやさしい」社会であると捉えている人がいるかもしれません。

例えば、社会全体で屋内完全禁煙が実施されているだけでなく、若者の喫煙者率を減らすためにメンソール味のタバコの販売を禁止する方向で進んでいたり、全体の喫煙者率を減らすためにタバコのパッケージにグロテスクな描写を張り付けることが規則化されていたりするからです。

そのため、「日本は海外に比べてタバコ対策に遅れを取っていて、海外を見習うべきだ」と叫ばれたりしていますが、海外=西ヨーロッパであるならば違和感を感じます。なぜならば、実際にオランダで喫煙者の身として生活していると、「喫煙者に厳しい」社会ではないのではないかと感じています。

 

今回は、西ヨーロッパ諸国の一つであるオランダに居住している私が喫煙者として感じることも含めて、オランダのタバコ事情について解説してみたいと思います。

 

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オランダ政府による禁煙政策と喫煙対策

オランダで販売されているタバコの警告パッケージ

オランダで販売されているタバコの警告パッケージ

オランダでは、タバコの害と関連性がある肺ガン等の病気で毎年約2万人が死亡しているとされています。こうした状況から、オランダ政府は喫煙者を減らす政策と非喫煙者を受動喫煙から守る対策を行っています。

オランダはEU加盟国であることから、EUが定めている禁煙対策ガイドラインに基づいて、タバコに関する政策や規則が作られています。

4つの禁煙政策

  • オランダ国内の喫煙者の数を減らす
  • 禁煙したい国民を手助けする
  • 非喫煙者を受動喫煙から守る
  • 若者が喫煙し始めることを防止する

6つの喫煙規則

  • すべての室内の公共施設やサービス施設(レストランやカフェ等の飲食店、ホテルや飲食提供施設)において喫煙禁止
  • 職場では、指定された喫煙所にてのみ喫煙可能
  • 小売店経営者は、タバコやそれに関する商品を18歳以下の者に販売してはいけない
  • タバコ専門店以外では、すべてのタバコに関する広告は禁止
  • タバコ業界は、イベントのスポンサーになってはいけない
  • タバコ規則に違反した者は、オランダ食品・消費者商品安全委員会によって罰金が徴収される

室内の公共施設やサービス施設で喫煙が完全に禁止されていることは、オランダだけでなく他の西ヨーロッパ諸国も導入しているはずです。この点に関して、日本とオランダでは喫煙規則に大きな「違い」があることが分かります。

 

上述したタバコに関する政策と規則において、注目すべき点があります。

現在オランダでは喫煙が可能な年齢が18歳以上となっていますが、2014年まではその年齢が16歳以上でした(アルコールも同様)。つまり、ごく最近になってオランダ政府が喫煙(・飲酒)可能年齢を引き上げたことになります。

その年齢引き上げが起きた背景には、日本と異なる現象が起きていることが影響しているのかもしれません。

 

オランダの喫煙率

WHO(世界保健機関)が発表した「世界保健統計2016度版」によれば、オランダと日本の喫煙率は以下のようになります。

オランダの喫煙率

  • 男性:26.2%(88位)
  • 女性:23.3%(19位)
  • 全体:24.7%=(約420万人)

日本の喫煙率

  • 男性:33.7%(60位)
  • 女性:10.6%(58位)
  • 全体:22.1%=(約2,800万人)

【参考データ】アイスランドの喫煙(ヨーロッパで最も喫煙率が低い国)

  • 男性:17.7
  • 女性:15.1
  • 全体:16.4

※統計データは2015年であり、喫煙率の順位はWHO加盟国の194ヵ国と地域より算出されています。

上記の喫煙率データを見てみると、オランダでは性別に関係なく喫煙しており、特にオランダ人女性の喫煙率は世界的に見ても高い割合です。反対に日本では男性の喫煙率は高いものの、女性のそれは非常に低い傾向があります。

日本社会内では「なぜ日本は喫煙者率が高いのか」と叫ばれていることがよくありますが、相対的に喫煙者率を見てみると実際には日本の喫煙者率は特別高いわけでもなく、タバコ問題に対して活発に取り組んでいる西ヨーロッパ諸国のオランダの方が実際高いということが分かります。

 

「若者のタバコ・ブーム」?

オランダ国内の年代別の喫煙者率を表した表

オランダ国内の年代別の喫煙者率を表した表 出典:CBS(一部加筆)

オランダ統計局(CBS)が作成した年代別の喫煙者率の表を見てみると、日本で以前から言われている「若者のタバコ離れ」現象とは、真逆の現象がオランダでは起きています

この統計データを見てみると、喫煙者率が最も多い年代(男女含む)は20代で38.1%と他の年代と比べて突出しています。また、1620歳の年代でも喫煙者率は約24%と非常に高い数値です。

日本の場合では、最も喫煙者率が高い年代は30~50代(男性のみ)で約3538%であるのに対し、20代(男性のみ)では約27%という数値になっています(こちら参照)。

※日本の場合、男女別の喫煙者率の乖離が大きいために男性の喫煙者率のみで比較しています。男女含めた場合は、30~50代で約2326%、20代で約18%となります。

 

そのため、オランダでは「若者のタバコ離れ」ではなく、「若者のタバコ・ブーム」が起きていると捉えられます。この「若者のタバコ・ブーム」問題も一つの要因として、オランダ政府は喫煙可能年齢を16歳から18歳へと引き上げたのではないかと考えています。

実際にオランダで生活していると、20代の若者がバーで友人たちとお酒を飲みながらタバコを吸っている光景を頻繁に見かけます。

「あれっ?オランダって飲食店で完全禁煙じゃないの?」と思う方がいると思います。もちろん「室内」では完全禁煙ですが、屋外であれば問題ありません。

 

屋内完全禁煙だけれども、屋外は自由

カフェのテラス席に座るオランダ人

カフェのテラス席に座るオランダ人 ※執筆者が撮影

オランダにある多くのカフェでは、前の通りやスペースにテーブル席を用意しており、太陽が照っている良い天気の日や暖かい季節になると多くの人々が店内ではなくテラス席に座って、お茶やコーヒー、ビール、ワインなどを飲みながら楽しんでいます。

日本ではカフェの前にテラス席を用意していることは非常に珍しい光景ですが、オランダだけでなくヨーロッパ各地で見られる光景です。そして、オランダではカフェなどの飲食店で室内完全禁煙が規則化されている一方で、テラス席での喫煙は許可されています

 

寒い冬の季節にバーのテラス席でお酒を飲むオランダ人

寒い冬の季節にバーのテラス席でお酒を飲むオランダ人 ※執筆者が撮影

 

そのためオランダの喫煙者は例え冬の寒い季節であっても、店外のテラス席に座って喫煙している場合がよくあります。こうした傾向は、お酒を飲んで楽しむバーでは更に高いと思われます。

日本の場合、カフェやレストランのテラス席(屋外)でも禁煙にしているところがほとんどだと思います。屋外とは言え、テラス席で食事を取っている非喫煙者たちがタバコの煙や臭いに対して苦情が出ると思いますし、屋外のテラス席から室内へと入ってきてしまう可能性もあります。そうした点を考慮して、テラス席でも禁煙にしていると思われます。

屋外のテラス席に座るオランダの非喫煙者は、喫煙者からのタバコの煙や臭いに対してどのように感じているのだろうかと常々気になっています。

 

路上喫煙の問題

オランダの喫煙率

オランダの路上喫煙は違法ではないため、多くの人が歩きタバコをする ※執筆者が撮影

日本の各都市では路上喫煙防止条例を作成し、路上で「歩きタバコ」をする人に罰則を与えるシステムが2000年代から増加しています。この路上喫煙防止条例が施行されている都市だけでなく、日本社会全体で「路上喫煙」「歩きタバコ」=「マナー違反」であると捉えられています。

歩きタバコによってすれ違う人に与えるタバコの悪臭や健康への害だけでなく、火傷をさせてしまう可能性を考慮するならば、正しい取り組みであることは間違いありません。

一方で、「喫煙対策先進国」である西ヨーロッパの多くの国々では路上喫煙に対する規制はありません。オランダでも同様に路上喫煙に対する規制はなく、そもそもオランダ人喫煙者が路上喫煙をマナー違反と捉えていないように思います。

そのために、喫煙者による路上喫煙は日本に比べて圧倒的に高い割合で目にしますし、街中心部の人混みの中でも関係なく路上喫煙をしている人が数多くいます。日本社会の視点から言えばマナー違反であるし、小さな子供に間違ってぶつかる危険性もありますが、オランダ社会の視点では問題のないことです。

しかしながら、オランダだけでなくヨーロッパ諸国で容認している路上喫煙は正しい判断なのでしょうか。

オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト。オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。


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大学時代に旧ユーゴスラヴィア史を研究し、1年間セルビアに留学。旧ユーゴ史研究者に少し憧れたものの諦める。現在は、オランダ・セルビアに特化した記事を書くフリージャーナリストとして活動。

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