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ナチス軍の生々しい歴史を展示するトポグラフィー・オブ・テラー博物館【ベルリン】

ナチス軍の生々しい歴史を展示するトポグラフィー・オブ・テラー博物館【ベルリン】

もしベルリンを訪れるならば、トポグラフィー・オブ・テラー(Tophography of Terror)博物館は絶対に行くべきです!

 

トポグラフィー・オブ・テラー博物館は、ナチス軍自体に焦点を当てたベルリンで唯一の博物館であり、ナチス時代に行われていた生々しい歴史を直視することができる貴重な博物館になります。

この博物館はナチスの親衛隊(SS)の一部であり、ドイツ本国およびドイツ占領地の敵性分子を諜報・摘発・排除する政治警察機構の司令塔として活動した国家保安本部(秘密警察ゲシュタポなど)が位置した場所となっています。

そして、ナチス・ドイツ時代の歴史を後世に伝えることを目的にしているためか、入場料は無料となっています。

 

午前11時に入場してから、最終的には午後3時過ぎまでの4時間超も館内の展示品を見ていました。

展示されている資料一つ一つに当時の状況が分かる説明書きがなされており、展示品すべてをしっかりと見ていくと丸一日は必要になるかもしれません。

しかしながら、丸一日かけてでもトポグラフィー・オブ・テラー博物館を鑑賞する価値は大いにあります。なぜならば、これまでに見たことがなかったナチス政権時代の貴重な写真や資料がたくさん展示されているからです。

 

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博物館の外側展示場

トポグラフィー・オブ・テラー博物館(外側からの写真)

トポグラフィー・オブ・テラー博物館(外側からの写真) ※執筆者が撮影

ベルリンの中心地であるアレクサンダー広場から電車で約20分のところに位置するトポグラフィー・オブ・テラー博物館は、かつて巨大な面積を誇る空き地にぽつんと建てられている無機質な建物内にあります。

 

トポグラフィー・オブ・テラー博物館の外側に位置する展示場

トポグラフィー・オブ・テラー博物館の外側に位置する展示場

建物の外側には、現在も残っているベルリンの壁に沿った形で展示場が設置してあります。

この展示場では、ナチス政権が国内権力を掌握し始めた1933年に、ベルリン市内の政敵だった政治家やその支持者を政治犯として拘束・処刑していた歴史的側面に触れています。

 

ナチス政権に反抗していた者たちが拘束されていた場所

ナチス政権に反抗していた者たちが拘束されていた場所

ナチス政権に反抗していた者たちが拘束されていた当時の写真

ナチス政権に反抗していた者たちが拘束されていた当時の写真

1933年段階でもすでにテロ行為が堂々と行われていたことは、私は今まで知らなかった歴史でした。

 

 

トポグラフィー・オブ・テラー博物館の館内

トポグラフィー・オブ・テラー博物館の館内

トポグラフィー・オブ・テラー博物館の館内

館内にはメインとなる常設展示場があり、5つの時系列・テーマに沿ってパネルがまとめられています。

  1. The National Socialist Takeover of Power
  2. Institutions of Terror (SS and Police)
  3. Terror, Persecution and Extermination on Reich Territory
  4. SS and Reich Security Main Office in the Occupied Countries
  5. The End of the War and the Postwar Era

前述したように、この博物館は秘密警察ゲシュタポなどの国家保安部が司令塔として機能していた建物が位置していたこともあり、親衛隊(SS)や警察組織に焦点を当てた展示が主となっています。

また、ドイツ国内だけでなく、国外のナチス軍に侵略・占領された国や地域で行われていたことも紹介するブース(4)もあります。

 

以下では、目にした展示内容物で特に気になったものを写真に収めましたので、その一部をまとめています。こうした貴重な資料が展示されていることを知ってもらえればと思います。

 

The National Socialist Takeover of Power

1933年3月国会選挙用のナチス党選挙ポスター

1933年3月国会選挙用のナチス党選挙ポスター

選挙ポスター内には、以下のようなことが書かれています。

「国会が共産主義者たちの手によって炎上している!この光景こそ、共産党やその同盟者である社会民主党が権力を握ると国内で起こりうるものだ!立派な市民は人質となって窮地に追い込まれている!畑は全焼している!悲鳴がドイツ全土で鳴り響くにちがいない!共産党を撲滅しよう!社会民主党を壊滅しよう!ヒトラー候補のリスト1に投票しよう!」

 

夏季休暇中のドイツ国民(1939年)

夏季休暇中のドイツ国民(1939年)

若い恋人または夫婦が夏季休暇を楽しむ至って普通の光景に、ハーケンクロイツ(鉤十字)が描かれた複数の小旗が掲げられていることの異様さを強く感じさせます。

 

1933年の国民投票で反対票を投じた男性への晒し刑

国際連盟離脱を問う国民投票(1933年)で、離脱に反対する票を投じた男性への晒し刑

「私は反対票を投じた。私はドイツ国民の裏切り者だ」と書かれたボードを首からかけている男性。

国際連盟離脱を問う国民投票、離脱に反対する票を投じた者はわずか4.9%のみだった(投票率は96.3%)。

 

戦争の捕虜と親密な関係を持った罪に問われた2人の女性に対する晒しの刑

戦争の捕虜と親密な関係を持った罪に問われた2人の女性に対する晒し刑

「私は戦争の捕虜と交際したために、ドイツ民族共同体(Volksgemeinschaft)から追放されました」

というボードを首からかけている2人の女性。

長い髪の毛を切られて、丸坊主にさせられている最中にもかかわらず、2人の顔にはほがらかな笑顔が見て取れます。

 

Institutions of Terror (SS and Police)

アウシュビッツ強制収容所に勤務していたナチス親衛隊(SS)のメンバー

アウシュビッツ強制収容所に勤務していたナチス親衛隊(SS)のメンバー集合写真(1944年)

ここのブースでは、ナチス親衛隊(SS)と警察組織に勤務していた重要人物や将校たちなど個人に焦点を当てています。

アウシュビッツ強制収容所で行われていた残虐行為を知っていた職員たちが、笑顔で写った写真に言葉を失います。

 

Terror, Persecution and Extermination on Reich Territory

「民族査定」を受ける「ジプシー人(ロマ人)」女性

「民族査定」を受ける「ジプシー人(ロマ人)」女性(1939-40年)

この女性が「民族査定」を受けた病院(Ritter’s institute)では、2万人以上の者が同様の「民族査定」を受けさせられ、「純血のジプシー」または「混血のジプシー」に区別されていた。

ジプシー(ロマ人)はナチス政権にとってユダヤ人と同じ「劣性民族」というレッテルを貼られていた。

 

同性愛者のために逮捕され、4ヶ月の禁固刑を宣告されたナチス親衛隊の男性

同性愛者のために逮捕され、4ヶ月の禁固刑を宣告されたナチス親衛隊の男性

ナチス親衛隊の電話交換手として勤務していた男性。セックスパートナーから告発を受けて、ゲシュタポに逮捕された。

 

ヒトラーの側近だったハインリヒ・ヒムラーは、1937年に以下のように述べていました。

「我々のナチス親衛隊内には、同性愛者がまだ存在している。年間に8-10件ほどの割合で発見されている。こうした者たちは階級を降格したり、解雇したり、法廷へ突き出している。宣告された刑期を終えたあと、同性愛者たちは強制収容所へ移送され、逃れようとしている間に銃殺される。このような方法を続けていけば、ナチス親衛隊からこうした同性愛者を最後の一人まで排除することができると信じている」

 

ナチス党が発行する月刊誌「The New People」内の広告

ナチス党が発行する月刊誌「The New People」内の広告

この広告内には以下のような文章が書かれています。

「この遺伝子疾患は生涯にかけてドイツ民族共同体に60,000RMものお金を負担させる。ドイツ民族の同志たちよ、これは君たちが払うお金だ」

 

SS and Reich Security Main Office in the Occupied Countries

このブースでは、ナチス軍に侵略・占領された国や地域で行われていたことを展示しています。

私が現在居住しているオランダと、私にとって第二の故郷であるセルビアのパネルもしっかりと用意されています。

オランダ

オランダのパネル

オランダのパネル

ナチス軍がハーグのビネンホフ「騎士の館」前の広場に入場したときの写真

ナチス軍がハーグのビネンホフ「騎士の館」前の広場に入場したときの写真

ナチス軍による「騎士の館」前での演説シーン

ナチスによる「騎士の館」前での演説シーン

 

セルビア

セルビアのパネル

セルビアのパネル

ベオグラード市内のカレメグダン城塞内に強制労働として集合させられたユダヤ人男性

ベオグラード市内のカレメグダン城塞内に強制労働として集合させられたユダヤ人男性

当時のセルビアにはたくさんのユダヤ系セルビア人が居住していましたが、ナチス軍によって大量虐殺されました。

詳細については、以下の記事を読んでみてください。

 

ナチス軍兵士に処刑されるユダヤ人らしき囚人

ナチス軍兵士に処刑されるユダヤ人らしき囚人

上記の写真は、ナチス軍に対抗していたパルチザン軍のよって22人のナチス軍兵士が殺害されたことへの仕返しとして、約10倍返しとなる2100人のセルビア人囚人が処刑させられたシーンの一部と言われています。

 

The End of the War and the Postwar Era

同盟軍に降伏した時のナチス軍女性兵士たちの表情

強制収容所に勤務していたナチス親衛隊の女性職員たち(1945年)

この写真に映るドイツ人女性たちは、裁判で禁固刑がそれぞれ宣告されました。

 

国際裁判に出廷する元ナチス軍兵士

裁判に出廷するナチス親衛隊の女性職員たち(1945年)

左から2番目の女性(9番)は強制収容所で勤務していた者であり、死刑が宣告されました。

左から1番目の女性(8番)には、15年の禁固刑が宣告されました。

 

法廷で出廷するものの、顔を隠す元ナチス軍兵士たち

法廷に出廷するものの、トレブリンカ絶滅収容所に勤務していたナチス親衛隊たちは顔を隠す(1964年)

展示場には、歴史学者Norbert Freiの言葉が引用されていました。

当時のナチス支配が及んでいた地域全体において、ナチスの犯罪を問う捜査が合計106,496人に対して開始されたものの、たった6,498人の被告に対してのみ最終判決が宣告された。

つまり、ほとんどのナチス軍関係者は戦後に自由の身として、これまでと変わりない通常の生活を送り続けていたことになります。

 

元親衛隊のメンバーがパーティーではしゃいでいる光景

旧武装親衛隊員相互扶助協会(HIAG)が企画したナチス武装親衛隊の元将校たちによる集まり

ナチス時代の武装親衛隊の元将校や兵士たちを援助する組織(HIAG)が西ドイツで立ち上がり、90年代前半まで活動を続けていたことに大きく驚きました。

とりわけ、上記の写真ではナチス武装親衛隊の元将校たちの集まりでは、みな笑顔で和気あいあいと話している光景に絶句しました。

 

以上に紹介してきた写真資料などは展示物のごく一部にあたり、それ以外にもたくさんあります。入場無料なので、ベルリンを訪れたら絶対に訪れてみてください!

 

公式サイト:https://www.topographie.de/en/
入場料金:無料
開館時間:月〜日曜日(10:00〜20:00)

 

オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト。オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。


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大学時代に旧ユーゴスラヴィア史を研究し、1年間セルビアに留学。旧ユーゴ史研究者に少し憧れたものの諦める。現在は、オランダ・セルビアに特化した記事を書くフリージャーナリストとして活動。

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