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EU加盟から5年ークロアチア国民はどのように感じているのか?

EU加盟から5年ークロアチア国民はどのように感じているのか?

2018年7月1日に、東ヨーロッパに位置するクロアチア共和国がEU(ヨーロッパ連合)に正式に加盟を果たしてから5周年を迎えました。

EU加盟を果たす前のクロアチアには、EU加盟による経済的・政治的恩恵がもたらされる高揚感もあり、多くの人々が待ち望んでいた歴史的な出来事として印象に残っています。

 

その歴史的な日から5年が経った今、クロアチア民放テレビ”Nova TV”が「EU加盟からこの5年間にどのようなメリット・デメリットを感じたのか?」、「どの生活分野に最も大きな変化があったのか?」を問う緊急世論調査を行いました。

この世論調査では、多種多様にわたる質問がクロアチア国民になされており、クロアチア国民がEU加盟からこの5年を実際にどのように思っているかを知ることができる指標となります。

 

以下の内容では、クロアチア民放テレビ”Nova TV”がまとめた資料を基にして、クロアチア国民の声をまとめています。

※以下の世論調査は”Nova TV”のニュースチームが世論調査会社IPSOSと共同して、2018年7月21-28日に行ったものであり、606人の回答者から作成されています。標本誤差(サンプリング・エラー)は+/-4%です。

 

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EU加盟によるクロアチア共和国へのメリット/デメリット

「EU加盟はクロアチア共和国にとって、メリットとデメリットどちらが多かったと思いますか?」

「EU加盟は、クロアチア共和国にとってメリットとデメリットどちらが多かったと思いますか?」 出典:Dnevnik.hr

  • よりメリットを感じた:28,4%
  • 五分五分に感じた:45,4%
  • よりデメリットを感じた:23,1%
  • 分からない/回答なし:3,1%

 

最初の質問は、EU加盟が国家「クロアチア共和国」にとって良かったのか/悪かったのかをクロアチア国民の視点から見ることができます。

上記の結果をみてみると、国家にとって「メリットもデメリットも五分五分にあった」と感じる回答者が半数近くに上ることが分かります。

 

EU加盟によるクロアチア国民へのメリット/デメリット

「EU加盟でメリットとデメリットどっちをより強く感じましたか?」

「EU加盟でメリットとデメリットどっちをより強く感じましたか?」 出典:Dnevnik.hr

  • よりメリットを感じた:19,5%
  • 五分五分に感じた:58,8%
  • よりデメリットを感じた:17,1%
  • 分からない/回答なし:4,6%

 

前述の質問と似ていますが、対象は「国家」ではなく「自分自身」にとって良かったのか/悪かったのかです。

結果をみてみると、「よりメリットを感じた」と答えた割合は約5人に1人であり、過半数以上の回答者が「五分五分に感じた」と回答しています。

クロアチア国民にとって、EU加盟によるデメリットをメリット同等に感じているネガティブな要素が見て取れます。

 

パスポートなしの国外旅行に対するメリット

「パスポートなしの国外旅行にメリットは感じましたか?」

「パスポートなしの国外旅行にメリットは感じましたか?」 出典:Dnevnik.hr

  • 強く感じた:47%
  • 多少感じた:25%
  • 何も変わらなかった:17%
  • 該当なし:9%
  • 分からない:2%

 

EU加盟諸国を飛行機で旅行していると、パスポートチェックをする入国管理局でEU国籍者レーンがあり、そこではEU国籍者がパスポートではなくIDカードで出入国している光景を見かけているかと思います。

EU加盟のメリットの一つとして、EU加盟国内の移動時にパスポートの審査ではなく、IDカードのチェックのみの簡素な出入国審査で終了することです。本当に便利なシステムで羨ましい限りです。

この質問に対して「パスポートなしの国外旅行にメリットを感じた」と回答した割合は72%にも上り、多くのクロアチア国民も出入国管理の簡素化による恩恵を享受していることが分かります。

 

EU域内のローミング料金撤廃に対するメリット

「EU域内のローミング料金撤廃にメリットを感じましたか?」

「EU域内のローミング料金撤廃にメリットを感じましたか?」 出典:Dnevnik.hr

  • 強く感じた:32%
  • 多少感じた:25%
  • 何も変わらなかった:26%
  • 該当なし:13%
  • 分からない:4%

 

2017年6月15日よりEU域内のローミング料金が撤廃され、EU圏の国(例:クロアチア)で契約しているスマホなどの通信機器を、他のEU圏の国(例:ドイツ)でインターネット接続などを利用しても、高額な料金を取られることもなく自由に使えるようになりました(詳細はこちら)。

オランダ通信会社と契約している私は、オランダ国外のクロアチアやドイツなどのEU圏内諸国に旅行で行っても、オランダ国内で使っている感覚でインターネット接続を楽しんでいます。

この画期的な撤廃によるメリットを実感している回答者は約半数のみに留まっていますが、年数が経てばこのメリットを実感するクロアチア国民もどんどん増えていくかと思います。

 

EU諸国からの輸入品に対する関税撤廃によるメリット

「EU諸国からの輸入品に対する関税撤廃でメリットを感じましたか?」

「EU諸国からの輸入品に対する関税撤廃でメリットを感じましたか?」 出典:Dnevnik.hr

  • 強く感じた:21%
  • 多少感じた:21%
  • 何も変わらなかった:38%
  • 該当なし:16%
  • 分からない:4%

 

質問「EU諸国からの輸入品に対する関税撤廃によるメリットを感じたか」に対して、実感する回答者の割合が少ないこと(42%)に驚いています。

EU圏内の貿易では関税が撤廃されているため、EU加盟まで多額の関税が含まれていた輸入商品の値段も安くなるはずです。

これによるメリットを感じていない国民が少ないということは、物価の高騰によってEU圏内からの輸入商品もそれほど安く感じないということでしょうか?

 

EU他諸国での就労機会に対するメリット

「EU加盟によって、EU他諸国での就労機会にメリットを感じましたか?」

「EU加盟によって、EU他諸国での就労機会にメリットを感じましたか?」 出典:Dnevnik.hr

  • 強く感じた:24%
  • 多少感じた:18%
  • 何も変わらなかった:30%
  • 該当なし:26%
  • 分からない:2%

 

西欧諸国に比べて経済的に豊かではない東欧諸国の人々にとって、自国のEU加盟における最大のメリットはEU圏内であれば、「労働者の自由な移動」が許されている=就労ビザ(労働ビザ)が必要なくなることです。

これまでにもブルガリアやポーランド、ルーマニアなどの東欧諸国がEU加盟して以降に、西欧諸国に就労機会やより良い賃金を求めて、西欧諸国へ向かう労働者も数多くいます。

 

クロアチア国民もEU他諸国、とりわけ西欧諸国での就労機会にメリットを大いに感じていると思いきや、回答者のうち42%ほどしかメリットを感じていないという結果になっています。

「労働者の自由な移動」を享受するようになっても、EU他諸国での就労機会に恵まれたり、そもそもトライする人が少ないということでしょうか?

 

EU他諸国での学校教育機会への可能性

「EU加盟によって、EU他諸国での学校教育機会への可能性を感じましたか?」

「EU加盟によって、EU他諸国での学校教育機会への可能性を感じましたか?」 出典:Dnevnik.hr

  • 強く感じた:18%
  • 多少感じた:13%
  • 何も変わらなかった:34%
  • 該当なし:31%
  • 分からない:4%

 

EU国籍者の学生は、EU圏内の大学で自由に学校教育を受ける機会を持つことができます。例えば、日本人国籍者がEU圏内の大学に通うためには、学生ビザを取得する必要があります。それが必要ないということです。

EUからイギリスから脱退することが決まった(ブレグジット)あとに、イギリス人学生などの若者が怒っていた一つの理由に、これまで享受してきたこの権利が剥奪されてしまうこともあります。

 

しかしながら、クロアチア国民はこの自由に学校教育を受ける機会を持てるメリットをまだまだ享受していないことが、上記の結果から分かります。

西欧諸国との経済格差が大きいクロアチアの人々にとっては、奨学金などを取得しない限り、EU他諸国の大学に通うことは財政的に難しい現実もあります。

今後、このメリットを実感する割合が増えることは難しいかもしれません。

 

EUファンドからの助成金によるメリット

「EUファンドからの助成金によるメリットを感じましたか?」

「EUファンドからの助成金によるメリットを感じましたか?」 出典:Dnevnik.hr

  • 強く感じた:11%
  • 多少感じた:17%
  • 何も変わらなかった:36%
  • 該当なし:32%
  • 分からない:4%

 

EU加盟国間には大きな経済格差を抱える国々が多々あります。5年前にEU加盟を果たしたクロアチアもその一つですが、地域間格差是正を目的とするEUファンドから、再分配される財政的援助をクロアチアもそれなり受け取っていると思います。

しかしながら、上記の質問に対する肯定的な回答をした割合の低さ(28%)を見てみると、EUファンドからの助成金がうまく国内経済に還元されておらず、実感できないクロアチア国民が多いのかもしれません。

 

良質な食料品の入手や食の安全に対するメリット

「EU加盟によって、良質な食料品の入手や食の安全を感じましたか?」

「EU加盟によって、良質な食料品の入手や食の安全を感じましたか?」 出典:Dnevnik.hr

  • 強く感じた:11%
  • 多少感じた:24%
  • 何も変わらなかった:51%
  • 該当なし:11%
  • 分からない:3%

 

EU加盟による欠点ーEU他諸国への人口流出

「EU加盟による欠点ーEU他諸国への人口流出は感じましたか?」

「EU加盟による欠点ーEU他諸国への人口流出は感じましたか?」 出典:Dnevnik.hr

  • 強く感じた:45%
  • 多少感じた:18%
  • 何も変わらなかった:15%
  • 該当なし:20%
  • 分からない:2%

 

クロアチア地元メディアによれば、クロアチアがEU加盟を果たしてから国外に移民した数は”最低でも”25万人と推定されています。ほとんどの移住先はドイツであり、それに次いでオーストリアとドイツ語圏が人気となっています。

こうした具体的な数値だけでなく、クロアチアからの人口流出は地元メディアでも以前から報道されており、クロアチア政府も問題視している状況が続いています。

そのため、「EU他諸国への人口流出を感じる」と答えた割合は過半数を大きく超える63%に上ります。

 

EU加盟による欠点ー農作物品の問題

「EU加盟による欠点ー農作物品に問題は感じましたか?」

「EU加盟による欠点ー農作物品に問題は感じましたか?」 出典:Dnevnik.hr

  • 強く感じた:25%
  • 多少感じた:18%
  • 何も変わらなかった:29%
  • 該当なし:26%
  • 分からない:2%

 

EU加盟による欠点ー官僚主義政治の拡大

「EU加盟による欠点ー官僚主義政治の拡大は感じましたか?」

「EU加盟による欠点ー官僚主義政治の拡大は感じましたか?」 出典:Dnevnik.hr

  • 強く感じた:30%
  • 多少感じた:21%
  • 何も変わらなかった:32%
  • 該当なし:12%
  • 分からない:5%

 

クロアチアはユーロ通貨を導入するべきか?

「クロアチアはEURO通貨を導入するべきですか?」

「クロアチアはユーロ通貨を導入するべきですか?」 出典:Dnevnik.hr

  • できるだけ早く導入すべき:8,7%
  • 経済体制が準備された時のみ、導入すべき:39,8%
  • 導入すべきでない:47,9%
  • 分からない/回答なし:3,6%

 

クロアチア政府やクロアチア中央銀行内では、自国通貨クーナを廃止して欧州通貨ユーロを導入しようとする案が2017年より模索され始めました。

2018年に入ってからは、政府が本格的にユーロ通貨の導入に本格的に動き始めて、2022-23年ごろにはユーロ通貨の正式な導入が行われるのではないかと言われています。

ただし、2009年のユーロ危機があったことや2007年にユーロ通貨を導入した隣国スロヴェニアで物価の高騰が発生したなどのマイナス要因もあり、ユーロ通貨導入に反対する声が強いことが伺えます。

 

EU域内におけるクロアチア外交に対する印象

「EU域内におけるクロアチア外交をどう思いますか」

「EU域内におけるクロアチア外交をどう思いますか」 出典:Dnevnik.hr

  • クロアチアへの利害のために尽力している:12,4%
  • 強力な加盟国に対して批判することなく同調している:81,4%
  • 分からない/回答なし:6,2%

 

 

以上、クロアチア国民がEU加盟からこの5年を実際にどのように思っているかを知ることができる世論調査結果をまとめてみました。

 

オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト。オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。


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オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。

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大学時代に旧ユーゴスラヴィア史を研究し、1年間セルビアに留学。旧ユーゴ史研究者に少し憧れたものの諦める。現在は、オランダ・セルビアに特化した記事を書くフリージャーナリストとして活動。

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