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セルビアで大人気な大衆音楽ジャンル「ターボ・フォーク」とは何か?

セルビアで大人気な大衆音楽ジャンル「ターボ・フォーク」とは何か?

先日「お問い合わせ」を通じて、「セルビアで人気な音楽にどのようなものがありますか?」という質問を頂きました。

イギリスなどの西欧諸国で流行している音楽であれば、海外メディアやYoutubeなどを通じて、ある程度は知ることができると思います。しかしながら、東ヨーロッパに位置する小国セルビアで流行している音楽を知ることは、日本だけでなく英語圏でもなかなか難しいです。

 

「セルビアで人気な音楽はなにか?」

この質問に対する回答は、ターボ・フォーク〈セルビア語:Turbofolk(トゥルボフォーク)〉です。「ターボ・フォークってなに?」と一度も聞いたことのない人がほとんどだと思います。

今回の記事では、セルビアで大人気の大衆音楽ジャンル「ターボ・フォーク」とはなんなのか、今セルビアで流行している曲を紹介しながら説明したいと思います。

 

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「ターボ・フォーク」ってなに?

日本でも1990年初期から大衆音楽としてJ-POPが音楽ジャンルの一つとして確立したように、セルビアでもJ-POPのような大衆音楽ジャンルとして「ターボ・フォーク」が1990年代に確立しました。

ターボ・フォークとは、セルビアの伝統的な音楽(日本で言う演歌)やロマ音楽、トルコ音楽にディスコ音楽やロック音楽を取り入れて発展した音楽ジャンルであり、典型的な特徴として歌詞の内容は「恋愛」や「悲しみ」、「お酒」など一般大衆が共感できるようなものが中心となっています。

 

冒頭にて、ターボ・フォークが1990年初期に確立したと説明しましたが、ターボ・フォークの概念を示すような音楽は、1980年代から見受けられていました。例えば、上記の曲”Mile voli disko”はセルビアの伝統的な音楽にポップ音楽調が組み合わさったものとなっており、まさしくターボ・フォーク曲と言うことができます。

ターボ・フォークは時として、セルビア民族主義を誇張する音楽ジャンルだと批判する人もいます。その背景には、ターボ・フォークがセルビアの大衆音楽ジャンルとして確立した1990年代、つまり数多くの悲劇が起きた旧ユーゴスラヴィア紛争(旧ユーゴ紛争)の時代に、ターボ・フォークが「政治的な道具」として利用されていたからです。

 

旧ユーゴスラヴィア紛争時に独裁者としてセルビア(当時は旧ユーゴスラヴィア)を率いていたスロボダン・ミロシェヴィッチ大統領は、紛争や西側諸国からの経済封鎖で疲弊するセルビア国民の気を紛らわすために、リズミカルに/楽しげに歌うターボ・フォーク歌手たちを国内メディアで積極的に活用していました。

ターボ・フォーク歌手たちの中には、セルビア民族主義を煽るような曲を歌ったり、当時の政治家たちと関係を持つ者もいました。1990年代に最も名を馳せた歌手は、Svetlana Ražnatović、通称Ceca(ツェツァ)です。ツェツァは、セルビア人マフィアとして大きな権力を持ち、自らが率いる私兵団の大佐として旧ユーゴ紛争に参加していたアルカンと結婚しました。

ツェツァとアルカンが1995年に行った結婚式は、セルビア国内メディアによって当時生中継されていました(上記の動画を参照)。ただし、アルカンは当時からマフィア組織の犯罪でインターポールから指名手配され、後には旧ユーゴスラヴィア国際戦犯法廷から戦争犯罪を問われて訴追対象となっていた犯罪者でした。そんな人物の結婚式がテレビで生中継されていたことは、当時の異常性を伝えるものとなっています。

 

1990年代に大衆音楽ジャンルとして確立したターボ・フォークは、旧ユーゴ紛争が終結した後の2000年代に入っても、その人気は衰えることなく発展していきました。2000年代に入ってから特徴的に見受けられるようになったのは、魅力的な体を持つ女性歌手が露出度の激しい衣装を着てテレビに出演する光景です。

こうした女性たちが出演するテレビ番組は視聴率が取れる現象があったため、数多くのテレビ曲は朝番組からでもターボ・フォーク歌手をゲストとして招いていました。また、女性たちもターボ・フォーク歌手としてセルビア国内で売れるためには魅力的な体を持つ必要性があると感じ、多額の資金を使って美容整形をする人も増加していきました。

美容整形に必要な資金は、時としてマフィアなどの犯罪組織絡みで集められているとの噂もあり、ターボ・フォーク=犯罪組織の温床となっていると批判する知識人もいるものの、やはりセルビア人の若者を中心にしてターボ・フォークの人気は衰えることはありません。

 

ターボ・フォークとは何か?という言葉での説明はここまでにして、以下では典型的で人気なターボ・フォーク曲を紹介していきたいと思います。以下で紹介する曲を聞くと、ターボ・フォークの曲調や歌手たちの典型的な声質、見た目なども感覚的に理解できるはずです。

 

典型的で人気なターボ・フォーク曲を聞いてみよう!

前述したツェツァは、現在でもセルビアでは大人気のターボ・フォーク歌手です。1995年に結婚したアルカンは、それから5年後にマフィア絡みの問題で射殺されました。夫アルカンが殺害された後でも、彼女は歌手として歌い続けています。

 

上記のツェツァと同等にセルビアのミュージックシーンで長年活躍し、絶大な人気を誇っているのはJelena Karleuša(イェーレナ・カルレウシャ)です。彼女も1990年代後半から大人気の歌手となり、今でも尋常上ではないレベルで人気があります。

 

これまでに上記で紹介した曲の再生回数を見てもらうと、2000〜3000万回とすごい数字になっているのが分かると思います。セルビア国内の人口が約700万人だけということを知ると、ありえない数字に見えるかと思います。

セルビアのターボ・フォーク曲がこれほどの再生回数を持つ背景には、こうしたターボ・フォーク曲がセルビア国外の近隣諸国でも大人気だからです。言語が類似しているクロアチアやボスニア、モンテネグロだけでなく、スロヴェニアやマケドニア、ブルガリア、ルーマニア、ギリシャ、近年ではトルコでも人気となりつつある音楽ジャンルになっているようです。

 

Djogani(ジョガニ)はセルビアで知らない者はいないほど、有名なロマ系セルビア人歌手です。上記の曲は、セルビア風結婚式の披露宴を舞台にしたもので、歌手である新妻とともに祝っている中、以前に離婚した元妻が登場するという破天荒なミュージックビデオとなっています。

 

Ana Nikolić(アナ・ニコリッチ)は、彼女が持つセクシーな体を惜しみなく見せるパフォーマンスで有名になった歌手であり、ほとんどのミュージックビデオやライヴでも露出度が激しい衣装で挑発的なダンスを披露しています。

こうしたターボ・フォーク歌手たちの外見は、若者のセルビア人女性がお手本とするものであり、日焼けした肌やブロンド髪、セクシーな体型や唇を真似る人が増加しています。そのため、ターボ・フォークたちの体を手に入れるため、美容整形を容易に決断する人が数多くいます。

 

男性のターボ・フォーク歌手では、以下のような曲があります。男性が歌う曲でも、美しい女性との恋愛模様を歌う曲が中心的です。

 

ターボ・フォーク音楽に新たな時代が到来か!

近年になって、ターボ・フォーク音楽に新たな時代がやって来ました。それは、ターボ・フォークにレゲエ音楽を取り入れたものになります。そのムーブメントの中心にいるのは、Rasta(ラスタ)です。

 

これまではソロ活動が中心的だったものの、最近は有名な歌手とコラボしたりもしているため、知名度はうなぎ登りで急上昇しています。再生回数も5000万回を超えている曲も多数あったりして、今後このムーブメントがどのような方向へ向かっていくのか大きな注目を浴びています。

また、こうしたレゲエ音楽を取り入れたターボ・フォーク音楽は、新ジャンルとして「Balkaton(バルカトン)」と呼ばれたりしています。

 

参考サイト
Srdjan Garcevic, Serbian New Year: the perfect time to start appreciating Turbofolk, The Nutshell Times.

 

オランダのハーグに在住しながら、セルビア(旧ユーゴスラヴィア他諸国)で起きている現状を独自の目線で発信するフリージャーナリスト。オランダの社会文化や現地での海外生活を最前線から追いながら、かつてセルビアに留学した執筆者が、旧ユーゴスラヴィア地域の社会問題を取り上げていく。お問い合わせは、info@kotaro-journal.comまで。


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大学時代に旧ユーゴスラヴィア史を研究し、1年間セルビアに留学。旧ユーゴ史研究者に少し憧れたものの諦める。現在は、オランダ・セルビアに特化した記事を書くフリージャーナリストとして活動。

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